※これは息抜きで書いた序章です。ファンタジーが一段落するまで書かない可能性があります。
ー狭霧 視点ー
生まれてから、私たちの運命は決まっていた。
神も占いも他人も信じたことはない。
しかし、私はそう思う。
結果には、必ずそうなる必然性があると思っている。
だから…そう、これは運命なのだろう。
鼻を刺すような異臭、耳に響く轟音、霞んで歪んだ視界…
なにもかも、運命。
なら、ここで息絶えるのも、運命であり必然。
そうだろう?
なぁ…
私は手に持っていた槍を地面に突き刺し、再び身体を起こす。
じゃあ、なぜ…
“死にたくない”と、思うのだろうか。
皮膚を焦がす熱血も、頭を狂わす鮮血も、この身に流れる血も…
全部、私のものであり、失ってはいけない生きた証。
やっと、分かった気がする。
生まれてから背負った、この運命のことを。
捧げよう、この魂。
火に熔けて消えゆくならば、無惨に骸となるならば…
可憐な華のように、美しき椿を胸に包まれよう。
生まれた意味を、成すために。
骨が折れて、内蔵がえぐれて、爪が剥がれて…
そんなことはどうでもいい。
ただ、私は戦火に身を投じる。
不思議と嫌な気はしない。
むしろ、今が一番楽しいとさえ思える。
お終いだったんだ。
もう。
なにもかも。
生きたいはずなのに。
私は気づけば、真っ赤だった。
綺麗な綺麗な真紅の色。
だから、だったのか…
悪魔に魅入られた、理由は。
ふと、目の前に黒い天使が舞い降りた。
この時は、幻覚だと思ってたんだ。
それか迎えだろう、と。
黒い天使は私にこう言った。
『キミがブラッド?』
頭のおかしいやつは、必ず幻覚を見る。
そして、勘違いして暖かく死ぬ。
冷えた体になるというのに。
私の返答を待たずして、黒い天使は『一度は身を捨てたんだろう?』と見透かしたように言った。
返答しなくたって良いことを。
『じゃあ、ボクが拾うね』
白く濁った目には、優しく微笑む“悪魔”が映った。
不気味だが、どこか優しい気を感じとる。
間もなくして、私は完全に全てを遮断した。
__そしてこの時、私は“悪魔”となった。
名もない、戦場の悪魔へと…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!