第36話

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2023/02/02 03:00
帰り道_____
 
理「なぁ、俺って入れ替わってた?」
 
恭「おん」
 
理「いつから?」
 
恭「先生を突き飛ばしてからかな?」
 
理「そっか……」
 
最近、二重人格が収まってきていることに安心していたが、そんなうまくいくはずがない
 
俺は不安定な自分に幻滅していた
 
もし、学校で皆の前でりーくんになったら…
 
俺は、何度もその瞬間を想像し背筋が凍った
 
高橋にも迷惑をかけるわけにはいかない
 
これ以上、迷惑かけたら、、、高橋でも俺のこと
 
嫌な想像ばかりが膨らむ
 
だめだ。しっかりしないと
 
俺は自分の不安な心に蓋を閉め平然を装い、家まで高橋と何気ない会話をして家まで帰った
 
ウーバーイーツで頼んだご飯を食べ、高橋はお風呂に入っていた
 
俺は、一人になり明日の学校への不安が押し寄せてきた
 
もし、またりーくんになったら…
 
皆の冷たい視線が頭をよぎる
 
いやだ。
 
俺は冷蔵庫を開け適当に飲み物を掴み一気に流し込んだ
 
理「ごくごくごくごくごく…ぷはッ………なんだ?!にがッ」
 
思ったよりも苦い味で驚く………
 
理「あいつ、こんな不味いの飲んでるのか?!」
 
俺はそのままジュースをキッチンに置き、ソファにお山座りをして膝に顎を乗せた
 
………
 
理「………はぁ」
 
また、だんだん不安になってくる
 
こんな時に、高橋の存在は大きい
 
高橋、早くお風呂から上がってきてくれないかな…
 
俺はお山座りをしながらちらっと横を見ると高橋が置いていったパーカーが雑に置かれていた
 
理「………ッ………」
 
パーカーに手が伸びかけたが、手を引き戻す
 
理「な、なにやってんだ」
 
自分でも、バカだと思う、、、けど、なんだか頭がぽわぽわして再びパーカーに手が伸びる
 
だめだと分かっていても
 
気付いたら、高橋のパーカーを抱きしめ思いっきり息を吸い込む
 
すると、高橋の匂いで体中包み込まれてさっきまでの不安が吹き飛んだ
 
俺は、思いっきりパーカーを抱きしめ匂いに包まれていた
 
でも、俺が欲しい物はこんなんじゃない…
 
もっと、あいつの温もりが…
 
………
 
………
 
ガチャッ
 
理 ビクッ!!!!
 
いきなり扉が開いて我に返りパーカーを背中に隠す
 
高橋はゆっくりと俺に近づき目の前で俺の目線に合わせるようにしゃがみこむ
 
恭「………何してたん?」
 
理「ッ…な、なにもッ////」
 
恭「へぇー。“なにも”ねぇ………」
 
理「………」
 
恭「あれ?俺のパーカーが、ないなぁ…どこ行ったか知ってる?」
 
理「し、知らない…」
 
恭「ほんまに?」
 
理「………ッ…」
 
恭「ほんまのこと教えて?」
 
理 …ぽろ、ぽろッ
 
俺は流したくもないのにいきなり大粒の涙が流れてくる
 
それに、高橋に…触れたくて仕方がない
 
頭が言うことを聞いてくれない
 
きっと、高橋は気づいている。俺がパーカーを持っていること
 
嫌われたかもしれない。気持ち悪いって思われたかもしれない。
 
どうしよう…どうしたら…
 
恭「長尾?」
 
理「…ふッ、う…ごめんッヒク」
 
恭「俺、怒ってないで?…それより、何してたん?教えてや」
 
理「…い、言わないッ…」
 
俺は首を横に振る
 
恭「じゃあ、怒る…」
 
理「ッ?!」
 
嫌だ…高橋に嫌われたくない…
 
俺はいつもよりもなぜか頭が回らない
 
嫌われるんなら、言った方がましだ
 
理「…ッ……学校でりーくんになったらどうしようって…不安になって、ジュース飲んだら、頭ぽわぽわしてッ…グス、また不安になって、たかぁしの匂いいっぱい吸ったら…落ち着いて、それで、、、ふぐ…もっとたかぁしがほしくッなって…」
 
恭「ふふ。俺とぎゅうしたかったんや?」
 
理「…ごめッ、、、ッヒク気持ちわるい、、よな?」
 
恭「そんなん思うわけないやん。可愛すぎて戸惑ってる」
 
目の前の高橋は頭を抱えしゃがみこんでいる
 
理「え?」
 
恭「ほら、おいで?」
 
目の前で両手を広げ待っている
 
理「や、行かない。」
 
恭「なんで?」
 
理「行かない。ッヒク」
 
恭「ぎゅうしないん?俺はここに居るで?」
 
理「………ッ嫌いにならない?」
 
恭「嫌いになんてならんよ?むしろ、ぎゅうしてほしいけどな?」
 
理 ………ギュっ
 
俺はソファから降りて高橋に抱き着いた
 

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