あれから、手紙のやり取りもできていない
何となく小っ恥ずかしくて出来ないのだ
部屋には、ボツになった手紙が何枚か置いてある
だけど、どれも出すつもりは無い
そして最近、チェカ様に言われて気がついたのだ
そう、私のファミリーネーム
そこで咄嗟に浮かんだのが
"オリカサ"
チェカ様には、分からないとだけ伝えてあるけど
日に日に分からなくなってくる
私が何者なのか
どういう経緯でここにいるのか
そして、"私"じゃない"誰か"の記憶
そこに、度々出てくるようになった
"オリカサあなた"という少女が────
そして数ヵ月後
学園から手紙が届いた
ユウさんが元の世界に戻る方法が見つかったと
実に、1年の時が経過していたのだ
せめて見送りにと、学園長から招待された
そしてまた数ヵ月後ぶりに、ここへやってきた
ユウさん……ユウとは、メールでのやり取りをしていた
そのうちに親しくなっていたのだった
6月の夜
間もなく卒業式の日
時刻は午後10時58分
あと数時間で日にちをまたぎ
ユウの16歳の誕生日を迎える
中庭────
サーっと風が通り抜ける
その風が雲を運び、月明かりを遮る
式典服のフードで見えずらいユウの表情
間違いなく、驚いているだろう
そしてすぐに、ふっと表情を緩めた
そして、こう言葉を紡いだ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。