第48話

私じゃない誰か
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2021/05/01 13:16
あれから、手紙のやり取りもできていない




何となく小っ恥ずかしくて出来ないのだ




部屋には、ボツになった手紙が何枚か置いてある




だけど、どれも出すつもりは無い




そして最近、チェカ様に言われて気がついたのだ




そう、私のファミリーネーム




そこで咄嗟に浮かんだのが




"オリカサ"




チェカ様には、分からないとだけ伝えてあるけど




日に日に分からなくなってくる




私が何者なのか




どういう経緯でここにいるのか




そして、"私"じゃない"誰か"の記憶




そこに、度々出てくるようになった




"オリカサあなた"という少女が────



















そして数ヵ月後




学園から手紙が届いた




ユウさんが元の世界に戻る方法が見つかったと




実に、1年の時が経過していたのだ




せめて見送りにと、学園長から招待された




そしてまた数ヵ月後ぶりに、ここへやってきた
ユウ
ユウ
あなた……!どうしてここに…
あなた

ふふ、びっくりした?

ユウさん……ユウとは、メールでのやり取りをしていた




そのうちに親しくなっていたのだった
あなた

元の世界に戻れるんだってね

ユウ
ユウ
うん。
色々あったけど……帰れることになった
あなた

そっか………よかったね

6月の夜




間もなく卒業式の日




時刻は午後10時58分




あと数時間で日にちをまたぎ




ユウの16歳の誕生日を迎える
あなた

ねえ、ユウ……少し聞きたいことがあるんだけど………いいかな

ユウ
ユウ
ん?なあに?
あなた

えっと………少し…外で話さない?

ユウ
ユウ
分かった
中庭────
ユウ
ユウ
……それで?聞きたいことって?
あなた

………私ね、魔法力中毒の症状で、変な夢を見たり、記憶が混乱したりしたんだけど

ユウ
ユウ
………うん
あなた

その時の記憶が……本物のように感じるんだ…最近

あなた

………………ねえ、ユウ

あなた

"オリカサあなた"って、誰なの

ユウ
ユウ
っ……!!!
あなた

ユウは初めて会った時言ったよね?
『あのあなた!?』って

あなた

きっとユウは、記憶を無くす前の私を知ってると思うの

あなた

教えて……私は誰なの?何者なの?

あなた

あなたは誰なの?
ユキっていう小さい男の子は誰?私が知ってる人だよね

あなた

あの灰色の猫ちゃんは?

サーっと風が通り抜ける




その風が雲を運び、月明かりを遮る




式典服のフードで見えずらいユウの表情




間違いなく、驚いているだろう




そしてすぐに、ふっと表情を緩めた




そして、こう言葉を紡いだ
ユウ
ユウ
分かった

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