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第6話

夏の日常2
2,039
2018/07/22 01:31
時は約2週間前に遡る
とある日の帰り道でのこと
山口 忠
ツッキー
月島 蛍
なに
山口 忠
あなたちゃんとまだ仲直りしてないの?
月島 蛍
っ…
や、山口には関係ないデショ
それに、これは喧嘩とかじゃないし
山口 忠
本当に?
山口が月島の顔を覗くようにして訊く
月島 蛍
ただ、お互いに意地汚くなってるだけ
″仲直り″出来るなら、そりゃしたいよ僕だって…
山口 忠
そっか
それ以上は、何も言わなかった
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あなた

お願いしまーす…

私は、恐る恐る第三体育館へと入る
ネットはもともと張ってあったみたいで、けーにいが器具庫からボールを取り出していた
あなた

あ、お疲れ様です!

月島 蛍
ん、お疲れ
あのさ、スパイス練習したいんだけど、トス上げてくれる?
あなた

は、はい…?
いや、あの、影山先輩に頼めばいいんじゃないんですか…?
私、一年くらいトスなんて上げてませんよ…

月島 蛍
僕はあなたのトスが打ちたいの
名前を呼ばれ、少しドキッとした
それを誤魔化すかのように、私はそそくさとボールかごの隣に立つ
久しぶりの緊張感と懐かしいボールの感覚に浸りながら、私はけーにいにボールを投げた
けーにいはそれをアンダーで返して、私はボールの下に潜る
けーにいの助走にあわせてトスを上げたとき、視界が滲んだ
スパァァン!!
筋の通った音を合図に、涙は止めどなく溢れだした
私は、そのまま膝を体育館床につける
立っていられないくらいに胸が苦しいのだ
月島 蛍
え、ちょっ!?
どうしたの急に…
あなた

ごめ、ごめんなさい…
上げます、トスは上げます
でも、少し待って…

月島 蛍
うん…
けーにいは、私の隣に座って背中をさすってくれた
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あなた

落ち着き、ました…
…練習再開しましょう!!

静かな空気を断ち切るかのように、私は大きく声を出す
月島 蛍
本当に大丈夫…?
心配そうに訊いてくるけーにいよそに、
あなた

ほら、投げますよ!

私は勝手に練習を始めた
そこから約1時間の間、けーにいにトスを上げ続けたということは言うまでもない

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