少しだけ古びた匂いが微かにする道路を早歩きで駆け抜ける.
うちは商店街の一角にある.
メインの商品は水飴のみ、一本で勝負している.
『ただいまぁ』
自分でも驚くくらい細い声を出すとお母さんと常連のおばちゃんがおかえりと笑顔で返してくれた.
「今日始業式だったんでしょ?先生どうだった?」
『あー…優しそうな女の先生だったよ。』
「そう!ならよかった!」
当然自分が怒られたことなんて言えなくてお世辞のように報告をした.
「ほんと大我くん白いわね〜」
『ありがとうございます!』
「お母さん似かしら」
そうかもしれませんね〜なんてまたお母さんとお客さんが話し出したので僕は自分の部屋に向かうことにした.
階段をのぼり左右の部屋の入口の前で一旦足を止めゆっくりと右側のドアを開ける.
そして鏡を眺めた.
僕が白いのはお母さん譲り、男の子なら嫌かもしれないけど僕はとても…嬉しかった.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。