『……ッ』
強く口を塞がれた…柔らかくてレモンティーの香りがした.
「きっついなー!!」
余韻に浸る隙もなくクラスは爆笑に包まれた.
「悪かったな。」
『うん、』
表情には出さなかったが胸の中では大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせていた.
文化祭の途中で来てくれたお母さんは驚いた様子で僕を見た.
お姉ちゃんは慣れた視線で微笑んだ.
あのお姉ちゃんは少しおっちょこちょいだから僕の服が入った袋を間違えて持って帰ってしまった.
そして松村くんは男子にからかわれていた.
その表情が笑顔だったから安心して胸を撫で下ろした.
絶望感をだされたらショックでたまらないから.
僕はレモンティーの香りを思い出し口元が緩む.
男子たちとじゃれ合うその横顔に問いかけた.
松村くんもファーストキスですか?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!