映画館を出た時の賛否は三対一に別れた.
松村くんはしきりに愚痴をこぼしたが、寝ていたので退屈だったとしか言いようがない.
僕と女子二人が実際に存在しない架空のストーリーを作って話していると、必死になって合わせてくるその姿が可愛らしくおかしかった.
その後は松村くんの要望でゲームセンターに行った.
でも僕はゲームセンターが大の苦手だ.
四方八方から鳴り止まない大きな電子音のせいで落ち着けないし、柄の悪い奴らが屯してそうで怖い.
しかし、みんなで一緒になってカーレースをしたり、UFOキャッチャーをしているうちに僕の胸は浮き立った.
ココ最近一人でいることが多かったから、とても楽しかったしなにより……
またこのメンバーで集まりたいとまで思うようになった.
龍花と二人でモグラ叩きをしている時後ろに視線を感じた.
シューティングゲームをしているはずの松村くんと玄がいかにも意味ありげに目を細めて僕達を見ている.
この瞬間、二人の意図、今日の目的にピンと来た.
「京本くんっ、たたかないと!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!