「今はどうしているんだろう?」
そんな事を考える度、
未玖は次第に、悩みを深くする。
心配をかけさせたと感じたのか
未玖の顔が少し下を向いた。
仮にも、未玖はエストロニアの「母」である。
「時を司る御子」として目覚めた
エストロニアの母は、
「時を司る神」である未玖だ。
未玖は少しずつ、前を見据えながら
エストロニアと目的を確認する。
それしか、できなかっただろう。
エストロニアも、
夢月家の事は分かっていたらしい。
それが分かっただけでも、未玖としては充分だった。
「夢月家」は、珍しい存在である。
「夢」や「幻」を司る、唯一の存在。
司ると言う点が一致した影響か、
未玖と楓の関係は普通の友人とさほど変わらない。
だがしかし、楓の行方は知れていない。
楓の真実を知り、
エストロニアの表情が少し悲しみに変わる。
月詠に一番大切なのは「優しさ」だ。
その事を未玖は理解している。
未玖は、エストロニアの最初の旅である
「未玖を探す旅」の時に、
エストロニアを月詠の後継者に
選んだあの時を、微笑ましく思った。
未玖の母だった「月詠」が、そうだったように。
お母さんである未玖の探し人なら、
尚更立ち止まる事はできない。
そう思ったエストロニアは、
未玖を追って、駆け出していった。
これが、エストロニアの「道標」の始まりだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!