先程とは掛け離れた速度で、紅炎に接近する。
「御子の昂り」は、エストロニアの
身体等に大きな影響を及ぼしている。
「火焔解放」を発動している紅炎でさえ、
攻撃を弾き返したりするのがやっとである。
「本気ではない」と告げるかのように、
紅炎の横を通り過ぎ、一撃を入れるエストロニア。
紅炎はタイミング良くガードをする。
しかし、一撃の威力のせいか後ろに仰け反る。
体勢を立て直す間もなく、
エストロニアは接近しこう囁く。
息をゆっくりと吸い込み、
静かに集中したその刹那の事。
エストロニアは、普段とは掛け離れた
一つの攻撃を紅炎に当てる。
それは、一瞬の出来事だった。
それをまともに受けていた紅炎。
思わず、その威力にがっくりと膝をつく。
「火焔解放」の副作用に該当する
身体への負担が現れた訳ではなかった。
攻撃の威力に衝撃と絶望を
突きつけられながら、
紅炎はその場に倒れ込んだ。
覚醒したエストロニアとの
力の差を実感した影響か、
紅炎から思わず悔しさが溢れ出す。
その悔しさは、楓にも未玖にも伝わっていた。
紅炎も気が済んだのか、
エストロニアに面と向かって降参を告げる。
こうして、エストロニアと
紅炎の戦いに決着が付いたのである。
紅炎は満足そうに「火焔解放」を解く。
エストロニアという、一人の御子の強さを
目の当たりにしたからだろう。
それを見たエストロニアも、
昂りを抑えるのだった。
「昂り」を抑えたエストロニアは、
身体が火照っているかのように
熱くなっているのを感じた。
「昂り」と言っても、
身体における突然変異である。
未玖もエストロニアの強さに満足しているのか、
少しずつエストロニアに近づく。
楓と未玖を見るようにして、
紅炎は去っていった。
未玖とエストロニアが
話を落ち着かせたところで、
先程まで話を聞いていた楓が口を挟む。
楓は、「役目を果たしたから充分だね」と
未玖にそう告げ、この場を去っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。