前とはうって変わり、今はエストロニアが優勢。
しかし、紅炎に引き下がる様子はない。
普通の人なら絶望してもおかしくない状況ではある。しかし、紅炎は笑っていた。
紅炎からすれば、
これはエストロニアの為ではなく、
「楓の為に来た」という個人的な理由である。
勢いよく助走を入れて、紅炎に接近する。
未玖が持つとされる「気を纏う程度の能力」は、
自分の身体能力等を飛躍的に向上させる。
「能力」である為、持続には魔力を要する。
だが、今のエストロニアには
その概念が存在していなかった。
僅かな思考をしながらも、紅炎が
隙を見せることはない。
「御子として、強くなりたい」
それが、エストロニアの唯一の願い。
そして、エストロニアの一つの目標。
未玖に教わったような手つきで、
紅炎の僅かな思考を弾き返すように攻撃を入れる。
突如として、紅炎の勢いが変化する。
如月紅炎が、自分とは全く違う個性に
「興味」を示した証拠だ。
戦況が変わった影響なのかは定かではない。
だがしかし、エストロニアには余裕が生まれていた。
紅炎の強気な返答が、
エストロニアを高揚させる。
それと同時に、何かを察知する。
未玖と楓が見守る中、
再び、エストロニアと
紅炎が別の視点で相見える。
二人が、揃って
自分自身の「個性」を最大限に発揮する。
二人が発揮する、
最大限の「個性」のぶつかり合い。
エストロニアは、未玖の持つとされる
「気を纏う程度の能力」と、
自分自身の伸び代を含めた「月詠としての強さ」。
紅炎は、自分が持つ「速撃」と「派生」。
生まれつきから持っていた、
「火焔解放」と呼ばれる「個性」。
今、ここに来て、
お互いの本気の「強さ」が、
衝突しようとしている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。