ヴォルフガングの勤務する病院に到着し、イザークは精密検査を受け始めた。
待つこと数時間、ヴォルフガングに連れられて、イザークが戻ってきた。
ほっと息を吐くニーナに、ヴォルフガングはまだ怪訝な表情を見せた。
イザークは、わずかに肩を揺らして反応する。
彼がヴォルフガングを怖がっていると判断したニーナは、すかさずふたりの間に割って入った。
意地悪を言うヴォルフガングをニーナが諫めると、ヴォルフガングはそれ以上、イザークを疑うようなことは言わなかった。
いくらか雑談を交わし、ニーナたちが帰ろうとした時。
ヴォルフガングがイザークを引き留めた。
ヴォルフガングがイザークの耳元で何かを言ったようだが、ニーナには聞こえなかった。
イザークもそうだとばかりに頷いているので、ニーナはそれ以上強く言えなかった。
***
病院からの帰り道、イザークの体調もよさそうなので、ニーナはそのまま市場で買い物をすることにした。
ニーナがイザークを振り返ると、イザークは少しためらった後に、口を開いた。
ニーナが軽く返事をすると、イザークは考え込む仕草を見せた。
何か引っかかる言葉でもあったのかもしれない。
会話の中の何気ない一言が記憶を呼び戻すきっかけになるかもしれないと、ニーナは話題を探した。
ニーナは、買い物がてら、イザークに次々と話題を振ってみた。
しかし、イザークはずっと上の空で、話を聞ける様子ではない。
あまり情報を詰め込むのもよくないかと、ニーナは話を切り上げ、再びイザークの手を引いて帰路についた。
【第7話につづく】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。