Mizuki_
涼の家に着くと先生はインターフォンを鳴らした。
この前と同じ。
しばらくしてから応答してくれた。
涼『…はい』
優斗「涼。久しぶり」
涼『先生…』
優斗「対面で話そ」
涼『瑞稀は…?』
優斗「いるよ。でも今日は大輝くんいないから」
涼『……待ってて』
涼がそう言うとインターフォンの通話が切れた音がした。
それと同時に玄関のドアが開いた。
瑞稀「涼…」
涼「……中入って…」
瑞稀「…お邪魔します」
優斗「お邪魔します」
3週間ぶりの涼の家。
今までとは違って落ち着くあの空気はなくて、なんだか緊張感が張り詰められていた。
優斗「涼。そろそろ来るなって思ってたでしょ?」
涼「…うん」
優斗「なんで来ないの?」
涼「……」
瑞稀「涼…?」
涼「ただ…何もできないなって、落ち込んでただけ…」
瑞稀「…どう言うこと」
涼「蒼弥と龍斗が泣いてた時、俺何もしてあげられなかった…。瑞稀は優しく声かけてあげて、あの2人のこと安心させてたのに、そばにいた俺は何もできなかった…。この前だって、学校行ったのに……蒼弥いじめられてて、助けなきゃって…でも体、動かなくて…結局大輝くんが助けてて……大事な友達なのに、俺は何もできないんだって…。蒼弥も龍斗も強くなろうとしてるのに、瑞稀だってこんなに頑張ってるのに、俺は何もできてないんだって……」
そう言い終わると、涼は泣いた。
やっと聞けた涼の気持ち。
なんでずっと話してくれなかったんだ…。
そんなの1人で解決しようとしたってできないでしょ。
だって俺らは1人で考えれば考えるほど自己嫌悪に陥ってしまうんだから。
優斗「それが理由で学校休んだの?」
涼「うん…」
優斗「今回は1人で解決しようとしたんだ?」
涼「…うん…結局できなかったけど…」
優斗「できるわけないじゃん」
涼「は…」
優斗「だって今まで1人で解決したことある?」
涼「……ない」
優斗「でしょ?いつもそういうとき涼も瑞稀もお互いのこと頼ってるじゃん。1人で解決しようとしたって、結局話しちゃうでしょ。今回も同じだよ。涼が話す気になってくれないと解決できない」
瑞稀「あ…だからこれは涼の問題って…」
優斗「そういうこと」
涼「…ごめんなさい」
優斗「謝ることじゃないよ。ただ、もっと瑞稀のこと頼っていいんだよって話。ほら。2人でひとつみたいなとこあるじゃん?2人とも笑」
瑞稀・涼「……」
優斗「どっちがどっちなんてないんだよ。2人とも強いからさ」
そんな先生の言葉に涼だけじゃなく、俺まで泣けてきた。
俺が泣く必要ないのに…。
なんで2人して泣いてんだろ…そんな状況に笑えてもくる。
なんだこれ…笑
優斗「明日からは学校来れそう?」
涼「うん…行こうかな」
優斗「よし」
涼「心配かけてごめんなさい。瑞稀も、ごめんね」
瑞稀「ううん。俺もごめんね」
って言い合って俺らは笑った。
そんな俺らの間に、もう嫌な雰囲気なんてなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。