手を洗い、汚れた服を脱いで洗濯に出す。
足元の台に見覚えのない服が畳んであって、手に取って広げると。
自分では選ばないような部屋着で、少し困惑する。
もこもこで冬用のダボッとしたものなんだけど、
パステルカラーな上、フードに猫耳が付いている。
着たくないが、1度脱いだ服をまた着て部屋まで行くのは面倒くさい。
***
僕の姿を見て嬉しそうにする茉由子さん。
まぁ逆に、僕の服を用意する人なんて茉由子さんしか居ないから選択肢なんて最初から1つなんだけどね。
両親は病院で忙しいから僕が何着ていようと気にしないと思うし、
双子の兄だって僕のそういう部分には無頓着だ。
で僕は女子っぽい服装とか興味無いし、
スカートとか動きにくいものは嫌いだから
基本背丈の同じ兄の服を着ることが多い。
僕の服に気を遣うのなんて茉由子さんぐらいだ。
そう俯きながら話す茉由子さんに冷めた視線を送る。
男ならこんな仕草にイチコロなのかもだけど、残念ながら僕は同性なので全く心が動かない。
冷たい目で見ていたけど、その茉由子さんの言葉に.......
残念ながら納得してしまった僕は、目を逸らして食卓についた。
スマホを取り出して任務の報告書を打っていると、「そういえば」と茉由子さんがまた口を開く。
その言葉に思わず顔を上げると、茉由子さんは何も無かったかのように朝食を作っていた。
そういうところが年の功っていうか、、、
普段割と同じテンションで騒ぐくせに、ふとした時に気を遣えるの、
年上の余裕.......。
茉由子さんがそのつもり無くても、悔しい。
でもそれに救われてるのも事実。
朝食を手に、様子を見に来た茉由子さんに僕は。
ヘラりと笑って返した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!