第64話

三柱の精霊王。
204
2026/05/31 11:26 更新
ゼノスは、

静かに指を組んだ。


先ほどまでの軽いやり取りから一転して、

その仕草には自然と人を引き込む落ち着きがあった。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
さて
紫の瞳が、

ゆっくりと全員を見渡す。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
まずは——
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
お互いを知るところから始めようか

柔らかな声音だった。


けれど不思議と、

その一言だけで場の空気が少しだけ和らぐ。
ガルド・レックス
ガルド・レックス
あっ!

勢いよく身を乗り出した。
ガルド・レックス
ガルド・レックス
ゼノス様と初めて話した時も、
ガルド・レックス
ガルド・レックス
こんな感じだったよな!!
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
こらこら
少し苦笑しながら、

ガルドの肩を軽く叩く。
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
興奮しすぎだよ、ガルド
ガルド・レックス
ガルド・レックス
だって懐かしいんだって!!
ガルド・レックス
ガルド・レックス
最初なんて俺、
ガルド・レックス
ガルド・レックス
緊張しすぎて何喋ったか覚えてねぇもん!
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
あー

思い出したように笑う。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
確か自己紹介の途中で机壊してたよね
ガルド・レックス
ガルド・レックス
あ!それは事故だ事故!!
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
事故で机壊すなよバカ
藤澤 涼架
藤澤 涼架
規模がおかしい
若井 滉斗
若井 滉斗
ただの暴君じゃないですか……
大森 元貴
大森 元貴
ツッコミが追いつかない
そんなやり取りを聞きながら。


ゼノスは、

たまたま隣に座っていた元貴へ視線を向けた。


紫の瞳が、

どこか面白いものを見るように細められる。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
赤髪くん——
少し考えてから、

自分で首を横に振った。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
いや
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
さっきも聞いたね
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
大森元貴
名前を、

確かめるようにゆっくり口にする。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
なんて呼ばれるのが好き?
大森 元貴
大森 元貴
あ、えっと……

少しだけ背筋を伸ばした。
大森 元貴
大森 元貴
元貴で大丈夫です
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
そっか

ふっと微笑む。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
元貴

一度だけ呼んでみる。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
やっぱり綺麗な名前だね
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
響きが好きだ
大森 元貴
大森 元貴
あはは、、ありがとうございます
真正面から言われると照れる。


思わず後頭部を掻いた。
若井 滉斗
若井 滉斗
褒めるの上手いなこの魔王
藤澤 涼架
藤澤 涼架
距離の詰め方が自然すぎるんだよね……
ガルド・レックス
ガルド・レックス
俺も最初に褒められたぞ!!
大森 元貴
大森 元貴
何て?
ガルド・レックス
ガルド・レックス
元気だねって!!
大森 元貴
大森 元貴
それはそう
ガルド・レックス
ガルド・レックス
なんでだよ!!

小さな笑いが起きる。


ゼノスは、

そんな空気を楽しむように眺めながら続けた。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
君たちの前の世界って
一瞬だけ言葉を選ぶ。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
……地球、で合ってる?
大森 元貴
大森 元貴
あ、はい
少し驚きながら頷く。
大森 元貴
大森 元貴
ご存じなんですか?
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
もちろん

椅子へ深くもたれかかる。

まるで当たり前の話をするみたいに。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
カイアスも、
少しだけ笑う。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
そこから転生してきた人間だからね
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
まぁ今じゃ—— 大知の悪魔だけど
大森 元貴
大森 元貴
あ、、あの人ね
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
知ってるんだ
ノクスが静かに頷いた。
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
えぇ、我が紹介しました
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
唯一無二の権能保持者
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
我ら悪魔が持つ七大権能——
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
そのどれにも属さない存在
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
“大知”という権能そのものを与えられた、
極めて特異な悪魔です
若井 滉斗
若井 滉斗
聞いた聞いた
藤澤 涼架
藤澤 涼架
改めて聞くとなんかすごいね
大森 元貴
大森 元貴
もう一度ご丁寧に紹介していただき
大森 元貴
大森 元貴
ありがとうございます
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
いえいえ
ガルド・レックス
ガルド・レックス
あいつ説教長ぇから怖ェのよ!!
ガルド・レックス
ガルド・レックス
途中から説教なのか
ガルド・レックス
ガルド・レックス
授業なのかわかんなくなったし!!
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
そこも含めて彼らしいよ
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
あはははっ

楽しそうな笑い声が響く。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
でも、彼は優しいよ
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
ちゃんと相手のこと考えて怒るから
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
そこは本当にそうですね
ガルド・レックス
ガルド・レックス
まぁ……うん
少しだけ視線を逸らす。
ガルド・レックス
ガルド・レックス
今思うと全部正論だったし……
若井 滉斗
若井 滉斗
反省してるんだ
ガルド・レックス
ガルド・レックス
してる!!
大森 元貴
大森 元貴
えらい
藤澤 涼架
藤澤 涼架
意外と素直
ガルド・レックス
ガルド・レックス
へへっ!だろ!?
ゼノスは笑いながら、

再び元貴たちへ目を向けた。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
機会があったら話してみるといいよ
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
口は辛辣
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
性格も割と辛辣
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
言葉も遠慮ない
若井 滉斗
若井 滉斗
フォローになってませんけど?
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
でも優しいから
大森 元貴
大森 元貴
ぜひ、会って見たいです
藤澤 涼架
藤澤 涼架
僕はちょっと怖いな……
若井 滉斗
若井 滉斗
同感
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
慣れれば平気さ

少しだけ間を置いて。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
多分
藤澤 涼架
藤澤 涼架
だからその“多分”が怖いんだって
その言葉に、

食堂室には再び小さな笑いが広がった。

ゼノスは、

今度は若井へ視線を向けた。


紫の瞳が、

興味深そうに細められる。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
じゃあ——
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
そこの黒髪くん

軽く首を傾げる。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
名前は?
若井 滉斗
若井 滉斗
あ、若井滉斗です
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
わかい……ひろと

その響きを確かめるように、

ゆっくり繰り返す。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
うん
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
いい名前だね

少しだけ微笑んだ。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
なんて呼ぼうか
若井 滉斗
若井 滉斗
あ、若井で大丈夫です
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
若井、ね
一度頷く。


そして——


数秒だけ若井を眺めた。
若井 滉斗
若井 滉斗
……なんです?
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
君さ、
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
見た目はクールっぽいのに
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
本当は結構ボケるタイプでしょ
若井 滉斗
若井 滉斗
なんですかその評価
即座にツッコむ。
若井 滉斗
若井 滉斗
いやまぁ……

少し考えて。
若井 滉斗
若井 滉斗
一応、ミセスではボケ担当ですけど
大森 元貴
大森 元貴
いや自分で言う事じゃないよ?笑
ガルド・レックス
ガルド・レックス
めちゃくちゃ分かるぞ!!

勢いよく指を差す。
ガルド・レックス
ガルド・レックス
若井は絶対そういうタイプだ!!
若井 滉斗
若井 滉斗
どういうタイプだよ
ガルド・レックス
ガルド・レックス
真面目そうに見えて
ガルド・レックス
ガルド・レックス
急に変なこと言うやつ!!
大森 元貴
大森 元貴
合ってる
藤澤 涼架
藤澤 涼架
合ってるね
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
確かにそうかも
若井 滉斗
若井 滉斗
なんで全員同意なんですか?

ゼノスは楽しそうに笑った。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
あと
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
苦労人っぽい
若井 滉斗
若井 滉斗
いえいえ、苦労人なのは元貴ですよ
大森 元貴
大森 元貴
いやいや、俺ら全員だろ
大森 元貴
大森 元貴
なんならこっちに来ても苦労し続けてるわ
若井 滉斗
若井 滉斗
それは否定できない
大森 元貴
大森 元貴
即答やん
藤澤 涼架
藤澤 涼架
諦めてる
若井 滉斗
若井 滉斗
誰のせいだと思ってんだ

元貴とガルドが同時に視線を逸らした。
若井 滉斗
若井 滉斗
お前らだよ
ガルド・レックス
ガルド・レックス
はははっ!!
大森 元貴
大森 元貴
……w
しばらく笑いが続いたあと。


ゼノスの表情が、

ほんの少しだけ真面目になる。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
若井
若井 滉斗
若井 滉斗
はい?
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
君は——

紫の瞳が、

まっすぐ若井を見据えた。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
精霊王が三体憑いてる
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
合ってるよね?
若井 滉斗
若井 滉斗
………え?

一瞬、言葉を失う。
若井 滉斗
若井 滉斗
なんで分かるんですか

アークが横から肩をすくめた。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
オレが分かるなら
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
ゼノス様が分からねぇわけないだろ
若井 滉斗
若井 滉斗
それもそうか……
藤澤 涼架
藤澤 涼架
感覚麻痺してるけど普通にすごいよね
ノクス・ヴェイル
ノクス・ヴェイル
普通ではないからね

ゼノスは若井から漂う魔力へ、

静かに意識を向ける。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア

ひとつひとつ、

確かめるように呟いた。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
なるほど
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
三柱の精霊王か
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
いいね

その声音には、

純粋な感心が混じっていた。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
しかも”聖霊”じゃない
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
“精霊”だ
若井 滉斗
若井 滉斗
なんの違いがあるんだっけ
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
昨日教えただろうか
若井 滉斗
若井 滉斗
あーぁ……?
大森 元貴
大森 元貴
忘れた顔してる
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
はぁ……
紫の瞳が静かに細められる。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
聖霊は世界の根源に近い存在
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
力そのものの象徴
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
時には世界を作り替える側ですらある
大森 元貴
大森 元貴
うわ、アグニじゃん
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
まさにな
ゼノスは頷く。

そして若井へ視線を戻した。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
でも精霊は違う
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
彼らは世界を支える者だ
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
海を巡らせ、風を運び、季節を繋ぎ
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
自然の循環を守っている

その声は、

どこか敬意を含んでいた。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
壊すための力じゃない
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
守るための力だ
若井は、

思わず目を瞬かせる。
若井 滉斗
若井 滉斗
……なんか
若井 滉斗
若井 滉斗
急に責任重大な感じしてきた
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
今更かよ
大森 元貴
大森 元貴
精霊王三体抱えてる時点で手遅れかも
若井 滉斗
若井 滉斗
やめて?
ガルド・レックス
ガルド・レックス
でも若井なら大丈夫だろ!!!
若井 滉斗
若井 滉斗
その根拠どこから来るんですか?
ガルド・レックス
ガルド・レックス
なんとなく!!
藤澤 涼架
藤澤 涼架
1番適当なパターンだ

ゼノスはそんなやり取りを眺めながら、

小さく笑った。
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
うん
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
でも確かに
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
君たちを見てると、
ゼノス・アルカディア
ゼノス・アルカディア
なんとかなる気がするね

その言葉は、

不思議と軽くは聞こえなかった。
大森 元貴
大森 元貴
……(きっと、なるようになるさ)
※この物語はフィクションです。

プリ小説オーディオドラマ