場所は——インロルシヤ王国。
城の転移広間。
冷たい石床の上に、
実力試験で不合格となった七人の兵士たちが
並ばされていた。
広間の中央では、
巨大な転移魔法陣が淡く光を放っている。
誰も口を開かない。
重苦しい沈黙だけが漂っていた。
ベルナール副団長はそんな空気など気にも留めず、
軽い足取りで前へ出る。
手を叩く。
まるで仕事の説明でもするような口調だった。
その時。
一人の兵士が震える声を上げる。
拳を握り締める。
広間の空気がさらに重くなる。
ベルナールは少しだけ首を傾げた。
興味があるのか無いのか分からない返事。
兵士は必死に続ける。
ベルナールは数秒だけ黙る。
そして。
小さく笑った。
兵士の顔に、
ほんのわずかな希望が灯る。
しかし次の瞬間。
あまりにも軽く言った。
笑顔のまま続ける。
唇を噛み締める。
ベルナールは少し考える素振りを見せた。
そして、
妙に明るい声で言う。
広間が静まり返る。
ベルナールは笑顔のままだった。
その言葉を聞いた瞬間。
兵士の顔から血の気が引いた。
ベルナールの言葉に、
情も、
迷いも、
何一つ感じられなかったからだ。
震える声が漏れる。
笑いながら肩をすくめる。
その姿は、
兵士たちの目にはどんな魔物より恐ろしく映っていた。
そして転移魔法陣の光が、
静かに強く輝き始めるのだった。
わざとらしく肩を落とす。
少し考える素振りを見せてから、
くすりと笑う。
兵士たちは誰も返事をしない。
できなかった。
転移陣の前に立つ足は震え、
喉は張りつき、
呼吸すら思うようにできない。
その中で、
一人の兵士が絞り出すように呟いた。
ベルナールはきょとんとした顔をする。
まるで当然のことを聞かれたかのように。
あっさりと言った。
笑みを浮かべたまま続ける。
その言葉に、
兵士たちの表情が強張る。
ベルナールは気にする様子もない。
少しだけ目を細める。
転移陣を指差す。
兵士たちは黙ったまま動けない。
ベルナールはそんな様子を見て、
深いため息を吐いた。
冷たい声が、
広間の石壁に静かに響いた。
その言葉に返せる者は、
誰一人としていなかった。
手をひらひら振る。
まるで出張に送り出すみたいな軽い口調だった。
わざとらしく懐中時計を取り出す。
兵士たちは俯いたまま動けない。
ベルナールはため息を吐いた。
その時。
何かを思い出したように指を鳴らす。
視線が一人の兵士へ向く。
先ほど、
妻と娘がいると訴えていた兵士だった。
あまりにも自然な口調。
兵士は言葉を失う。
にっこり笑う。
だが、その笑顔は妙に冷たかった。
懐中時計を閉じる。
声色が少しだけ低くなる。
兵士の肩が震えた。
ベルナールは微笑んだまま続ける。
静寂。
兵士は何も言えなかった。
逃げ道を与えられたようでいて、
実際にはどこにも逃げ場がない。
そんなことを、
誰より本人が理解していた。
その言葉と同時に、
兵士は震える足で走り出した。
背後では、
ベルナールの笑みだけが変わらず残っていた。
※この物語はフィクションです。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!