小谷くんの優しさに甘えて買い物をして帰ることになった。
今日は昼間のバイトだけだったので、せっかくだから一緒にご飯を食べる事になり、食べたい物を聞きながら一緒に買い物を済ませてスーパーを後にする。
帰り道は他愛のない話をしながらだったけど、会話も途切れる事無く続いていく。
今回の旅行で少しは浦部くんや楠木くんとも話せるようにはなったけど、小谷くんに比べれば全然話せていなかった事に改めて気付く。
話せない違いは『慣れ』なのか、それがイマイチ分からない。
アパートに着き、持って貰っていた荷物を受け取りながら頷いた私は小谷くんが先に部屋に入るのを見送って自分の部屋の前へ辿り着く。
すると、ドアの間に一通の封筒が挟まっていた。
封筒を取って、恐る恐る中を開けてみると、
中には二枚の写真が入っていて一枚は小谷くんと並んで歩く姿、もう一枚は旅行当日、駅で浦部くんたちと合流した時の写真。
そして、その二枚の写真にはどちらも赤いマジックで大きなバツ印が書かれていた。
これが意味するものは一体何なのか分からないけれど、今まで以上に身の危険を感じてしまう。
部屋着に着替えた小谷くんが部屋から出て来ると、先程の写真を手渡した。
小谷くんに促された私は鍵を開けて小谷くんと共に部屋の中へ入った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!