決して自分に甘えてはならない。
常に正しい方へ導くために自分に厳しくする、それが自分を守る方法だと思っていた。
[作詞・作曲をやってみないか?]そう言われた時、嬉しかった。自分を必要としてくれているように思えて。
でも徐々にプレッシャーに変わっていった、[お前には才能がある][もっと君が思うままに、君らしい曲がいいな]
なんだ?才能って??
俺らしい曲ってなんなんだ?
俺は精一杯の努力を重ねた。
でも、いつも才能の一言で片付けられた。
最初は楽しかった作曲や作詞も、次第に業務に変わっていた。
新しい曲が出来る度、俺の頬はやつれていった。
ある日あなたが心配して俺を訪ねてきた。”自分の体を1番大切にして欲しい”と。
正論だと思った。でも追い詰められていた俺はその優しさに理不尽な感情をぶつけた。
🍚「そんなの、俺が1番よく分かってる。でも、デビューしたら俺の曲に仲間の未来がかかってるんだッ!!!」
理不尽に怒鳴りつける俺の話を何も言わず聞いてくれた。
あなた「私ね……」
そう言って語り始めた。
俺は気付かされた、1番大切にしなきゃいけないものに。
俺はこの日から、体調管理を第一に考え、睡眠時間を増やした。
前向きな考え方が出来るようになっただけじゃなく、良いアイディアが思い付くようになった。
もう一つ変わったこと。
それは、あなたと話すようになったことだ。
いつかあなたの言うように、素敵な人が現れて支え合うことが出来るのなら、その人はあなたであってほしい。そんな考えても仕方のないことを考えてしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!