あれから、1ヶ月。
僕はまた今まで通りの生活に戻っていた。
この仕事は僕に向いているなと、最近思う。
辛い現実に向き合わないといけなかったり、失敗をしたら患者の命に繋がったりと、精神的に辛くなる時もあるけれど、
持病を患っている人を助けられる。
一緒に、立ち向かうことができる幸せは、ここでしか感じられない。
それに何より、何もかも忘れて集中できる。
そう思っていたのに、先輩と出会ってから変わってしまった。
…っ、また思い出しちゃった、、先輩のこと、
気まずい雰囲気のまま、また会わない日々が続いてしまい、胸が苦しくなる。
あの時、僕も好きだと言っていたら、、
どうなっていたのだろうか。
雨の中で先輩の背中にかけたコートも、会っていないからもちろん返してもらっていない。
僕も他のコートはあるし、全然所有物にしてもらっていいんだけど、、
ポケットに過去の先輩のスマホを厳重に保存してあったのだ。どうにかして返してもらわないと、、
僕は大きなため息をついた。
th side
快晴だったが、だんだんと薄暗くなってきた空が現在の時刻を暗示している。
今は夕方ごろ、、かな?
周りを見渡すと、撮影のために入場人数が制限されているから人はほぼいない。
ぼそっと呟いた声は、、
届いていたみたいだ。
そう、今日来ているのはソウルで一番といっていいほど大きな遊園地。
ドラマで遊園地のシーンを撮影するため朝に来て、全て終わったから遊び呆けていたところ。
初めてだから楽しみたいけど、
それどころじゃない。
実際振られたのは1ヶ月ほど前だが、ナムマネには昨日、今まであったことを全て話した。
事故の直前にチョンさんを好きだと自覚したこと、
病院の帰りに告白したこと、
(き、キスは除外!!)
そして、振られた後に「他人だから干渉するな」と言われたこと。
何を言われても諦めない。
そう決めていたのに、、
なぜかあの一言が腑に落ちてしまい、これは無理だなと悟った。
そういう問題でもない、、気がする。
ナムマネが、俺の座っていたベンチの隣に腰掛ける。
スピリチュアル的なものなのか分からない。
記憶はないけどチョンさんとどこかで出会ったことがある気がする。
最初に出会った時も、式典の階段を降りている後ろ姿を見て、本能的に身体が動いていた。
懐かしく、苦しい
なんとも表現し難い感情の中で、俺は思ったんだ。
「やっと、見つけた」って。
考えれば考えるほど分からない。
チョンさんが「出会ったことがない」と言っていたから、それを信じるべきなのか?
いや、明らかに嘘をついている。
でもなんのために?
俺は彼の全てに惚れて、その優しさに、甘い声に、誘惑されて引っ張られるようにトリコになった。
もっと全てを知りたくて、触れたいと思ったから。
でもそれは、俺じゃないのかもしれない。
誰か、俺じゃない別の人が心の中にいるような気がするんだ。
ナムマネの声に頭のソードラインを超えた意識が、ふっと呼び戻される。
答えの見つからない問いを1人で考えていても、意味がない。これ以上模索するのはやめよう。
チョンさんが俺を嫌っているかもしれないのなら、近づかなければいい。
お互い、頭を冷やすべきだ。
頭を地面に向けて大きく下げ、一息ついて立ち上がった。
そんな俺を見て、ナムマネは嬉しそうに笑う。
意気消沈していた俺が、ついに行動を示したのが嬉しいのか肩を唐突に肩を組まれる。
ふと視線を上げた時、大きな観覧車が目に映った。
虹色にライトアップされたその光景に、外部から引っ張られるかのように、無意識に言葉が漏れた。
俺が言葉を発した瞬間、静寂の時間が流れる。
俺、今、なんて言った、?
なぜかその瞬間、あるはずのない記憶を思い出した。
俺はこの場所に、来たことがある。
誰かの名前を呼んで、叫んで、
その相手が泣いている。
しかし、その涙を流している人の顔は思い出せない。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!