思い出したって、、
いや、あり得ない。そんなことがあるはずない。
だって先輩は、一度亡くなっているんだ。
そのときの記憶が先輩の中に存在しているわけがない。
今の僕は目をまん丸に見開き、口もだらしなく開いて酷い顔をしているだろう。
しかしそんなのも気にならないほどに、先輩の発言と今起きている出来事が信じられなかった。
どうして、、
声が震える。
手も足も、鼓動も音を立てて暴れ出しそうだ。
涙で視界が馴染んでいく。
まだ今なら引き返せる。
そう思って頭を下げ、先輩を突き放すようにできるだけ冷たく言葉を放った。
嘘と、罪悪感で固められた僕の心を溶かすように、
そして僕の言葉を遮るかのように、
先輩は優しく僕の身体をもう一度抱きしめた。
「強がってなんかない」
そう言おうとしたのに、口をぱくぱくと開くだけで上手く言葉になってくれない。
その時、ようやく分かった。
これは僕の本心じゃないんだなって。
今まで会えなかった分を、触れられなかった分を感じようと先輩の身体を痛いほど抱きしめる。
そしてそんな僕を宥めるように優しく、背中を撫でてくれる大きな手。
こくこくと、必死に頷く。
先輩、、泣いてるの?
身体を離してその瞳を見つめると、キラキラと流れる雫が見えた。
先輩は叫ぶように、そしてか弱く懇願するように詰まった言葉を吐き出した。
最後の言葉が、、先輩の本心なんだ。
先輩の周りがキラキラと、
世界が全て輝いて見える。
僕の使命は先輩を守ることじゃない。
先輩を側で、、支えることだったんだ。
1番、近くで。
やっとだ、、
やっと、帰って来れたんだ。
ねぇ、神様?
僕達の未来を幸せなものへ、変えてくれますか?
先輩の胸の中へともう一度、抱きついた瞬間に先輩の唇が僕の唇に重なった。
何度も何度も、
お互いの気持ちを確かめるように口付けを交わす。
「白馬の騎士」になるからね_____________
3年後
アジア国際授賞式にて
司会者
「アジア国際俳優賞授賞!おめでとうございます!
キムテヒョンさん!!」
司会者「韓国人で歴代初の受賞という異例を成し遂げましたが、今のお気持ちは??」
しっかりと決められた髪型に、凛々しい眉。
真っ暗なスーツを着こなす、その王子様のようなシルエットに感嘆の声が思わず漏れてしまう。
そしてカメラへと向けられた甘い笑顔に、会場からは黄色い歓声が上がった。
そして僕もまた、テレビ越しだがその1人に過ぎない。
年をとるたびにかっこよくなるなぁ、、
この人は。。
そうぽわぽわとした気持ちでソファに座り、テレビに釘付けになっていたため、
コツ、コツ、
後ろからの足音に気が付かなかった。
ふと後ろから気配を感じて視線を向けると、
そこにはテレビで映っていた、大好きな人が腕を組んで立っていた。
その口はなぜか、、不機嫌そうに膨らんでいる。
テヒョンアはつい1ヶ月前ほどに、とある会見を開いて話題を呼んだ。
僕とテヒョンアがデート中に手を握っている写真を撮られて流出したことをきっかけに、
付き合っている人がいるということを、公表してくれた。
授賞式で言っていた「最愛の人」は、、
もちろん僕のこと!!!!
だから幸せすぎて毎日のように見返しちゃってる。
むぅ、と完全に拗ねてしまった恋人を、
優しく抱きしめた。
顔を真っ赤にしている恋人を見て、無意識に口角が上がっていく。
まさかもう一度、この人の隣で笑っていられる日々が来るだなんて予想もしていなかった。
この3年間、何度も聞いて何度もはぐらかされてきた質問をまた投げかけてみる。
あの日、テヒョンアが機材の下敷きになった日に貸したジャケット。
返された時にはポケットの中に入っていたはずのスマホはどこかに消えていたんだ。
それにテヒョンアが前世の記憶を思い出せたのも、、
不思議で仕方がない。
ごめんね、グガ。
何度目かもう分からない質問に、また同じ嘘をつく。
正直、本当のことを言ってもいいような気がするけど、
あのスマホは今も俺が隠し持っているんだ。
だってもう、必要ないでしょ?
前世の俺が、
あのビデオレターに託した思いと紡いでいた言葉は、
これから俺が、
一生をかけて君に伝えていけばいいんだから。
それが俺の生きている理由。
使命なんだよ。
時空を超えて、
もう一度、結ばれることができた俺達なら、
きっと、来世でもまた恋に落ちるだろうね。
君のその笑顔にまた、恋をさせてほしい。
「僕も、愛してるよ。」
「白馬の騎士 〜真実の愛の物語〜」end
この小説の題名「白馬の騎士」、、
グクくんのことかと思いきや、まさかのテテくんのことだったんですよね🤭
ここまで見てくださった皆さん!
ありがとうございました😭😭
次回あとがきだけ投稿です🫶🫶


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!