前の話
一覧へ
次の話

第2話

なに意識してんだ、俺。
3,125
2019/05/21 09:28
「………………………え、」





俺の唇に微かに触れる、シルクの唇。
ほんの数秒のあと、俺からゆっくりと身体を離したそいつは、耳まで真っ赤にして去っていった。



シ「……また、メールする」


モ「…………おう……?」





そんな言葉を交わして、シルクが見えなくなったあと、呆然と立ち尽くしていた俺はふと我に返った。





…いやいやいやいや俺バカじゃねぇの!!?なんだ『おう』って!!『おう』って!!!!断ろうと思ってたんだろ!?今のは、こう、ちゃんと、軽蔑した目つきで、『お前何やってんだよキモチワリイ』とかなんとか言うとこなんじゃねぇのかよ!!!おかげでまた繋がりできちゃったじゃねぇかどうしてくれんだ俺ぇぇぇぇ!!!!!



ガタッ


モ「うおおおおぅ!!????」
?「うわぁぁ!!??」


突如目の前に現れた人影が、地面に向かって急降下した。



?「なんだよデケェ声出すなよ死ぬかと思ったじゃねぇか!!」



そこには、どうやら腰を抜かしたらしいマサイが座り込んでいた。


モ「あ、おぉ、マサイか、ビックリした…」
マ「ビックリしたのはこっちだっつーの!!」

腰を気にしながらゆっくりと立ち上がるマサイ。
なんか色々と頭がいっぱいになっていた俺は、“ふつうの”友達の顔を見て何となく安心した。


マ「なぁ、なんかさっきすげぇ叫んでたけどなんかあったんか?」

声に出ていた。死亡確定のお知らせ。

モ「…聞いてた?」
マ「んや、内容までは知らんけど」
モ「あぁ…いや、何でもねぇよ、跳び箱の角に小指ぶつけて痛かったんだ」
マ「そりゃ痛てぇなw」

何も知らない様子のマサイを見て、俺は胸を撫で下ろした。
良かった。バレてなくて。
バレていたら俺の高校生活はどうなっていたやら…考えるだけで寒気がする。

…考えんのやめよ。(極論)


マ「あ、そうだモトキ、このあと予定ある?」
モ「え?いや、部活もないし普通に帰るだけだけど」
マ「じゃあ帰りにラーメン食って帰ろうぜ!新しいとこ出来たんだよ」
モ「あー、金ねぇし、どうすっかなぁ」

マ「…………激辛、あるけど(ボソッ)」
モ「行きます。」

俺は『激辛』という言葉にめっぽう弱い。
小4のときに辛いの目覚めたんだっけなぁ。
将来《地獄暗黒豆腐チャンネル》とかいう名前でYouTubeでもやってみっかなぁ。、
……ねぇな。





店「いらっしゃっせぇ~」

店中に充満する辛そうな匂い。
テーブルの上に並べられた数々の辛い調味料たち。
早く食べたくて涎が出る。
俺は『とんこつらーめん10辛』なるものを頼んだ。

モ「いっただっきまぁぁす!!!」
マ「いつになくテンションたけぇなwww」

俺は目の前に置かれたラーメンを、一気に口の中へ放り込んだ。



さぁ、どうだ…?



モ「ゲホッゲホッ、あ"ぁぁゲッホッホ(←)…辛ぇぇぇ!!!!!」
マ「ゲッホッホwwwwwww」


無理でした。


辛い。めちゃくちゃ辛い。
さすがに10辛は早まったか……。
ここはもっとこう、5辛あたりから始めてみるとか、安全に一口ずつ行くとか、色々あったはずなのに。、
あぁ、激辛好きとしてこの結果には不甲斐なさしか残らない。
大人になるまでには絶対にこの10辛を平気な顔して食べてやる!!!!!!



マ『ちょっといいですかおこげ(著者)さん。多分見てる人はラブストーリーだと思って見てると思うんですよね。ラーメンのくだり皆もうお腹いっぱいだと思うんで本編に戻ってくれます?』

おこげ『アッ、すいません』

モ「まって!もうちょっと語らせtモゴモゴモゴ」

マ『はぁい、ちょっとだまろうねぇ。』

おこげ『すみませんマサイさん。ご迷惑おかけします。…では気を取り直して、本編へどうぞ。』




モ「んあぁ、ごちそうさまでした…。無事完食だぁ……!!」
マ「一悶着あったけどな」
モ「え?どゆこと?」
マ「…お前、辛すぎて記憶トんだか」

マサイがなんのことを言っているのかよくわからないが、取り敢えず食うもん食ったし帰ろう。


店を出た途端に
『かえ~るで~ござるよ~ もう帰るで候~~』


なんてぺけたんの歌が聴こえたのは気にしないでおこう。


マサイはこれから習い事があるらしく、俺とは逆方向に帰っていった。


モ「さ、俺も帰りますかぁ。」




シ「なぁ。」



突然背後から声をかけてきたのは、『ついさっき俺に告白してきたやつ』だった。

正直まだ平気で話せるほど頭の整理が出来てない。
なんでコイツはこんなに平然としてんだ。
動揺を隠せない俺。


モ「………どうしてシルクくんがここに…?」
シ「なに、どーしたんその喋り方」
モ「いや、なんでもないっす」
シ「ふーん、、」


変な間。やりづらい。


シ「…メール。」
モ「メール?」

俺はポケットから携帯を取り出し、メールを開いた。

モ「通知24件…多いな。…って全部お前かよ!!多いわ!!」
シ「だって返してくれないから。、」


お前は女子か。
気づいてなかっただけだっつーの。


モ「あー。、すまんな、、…一緒に帰ってやるから許せ」

何言ってんだ俺。

シ「まじで…?っしゃ…!」


お前もお前でなんて顔してんだ。

嬉しそうに笑った顔を、少し可愛いと思ってしまった…気がする。どうしたモトキ。



しばらく無言で歩いていた2人だが、不意にシルクが口を開く。


シ「さっきの男、だれ」
モ「は」
シ「だれ。」

何むくれてんだ。
俺は彼氏じゃねぇぞ。

モ「ただの友達。放課後偶然会って」
シ「放課後?それいつ」
モ「え?いやだから、お前に告白されたあt………あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
シ「なんだようるさいな」


思い出しちまったじゃねぇかぁぁぁ!!!!
忘れてた訳ではねぇ!!!!
でも考えないようにしてたんだ!!!!
意識させんなこのバカ!!!!!!!

…という気持ちを抑え込み、

モ「…いや、なんでもねぇ」

そう答えた。

シルクの頭の上にいくつかの《?》が浮かんでいたような気がするが、これ以上この話を展開させたくない。

シ「あ、そうだ」
モ「なに」
シ「俺の家、こっから近いんだけど、カードゲームめちゃくちゃ揃ってんだよね。………来ねぇ?」

この時、シルクの表情の変化に気づいていれば。

モ「なんのカード?」
シ「○○とか□□とか、まあそんな感じ」
モ「行く。(即答)」

追加情報です。俺は『カード』という言葉にもめっぽう弱い。


今思えば俺は、自分のことを『好き』なんて言ってる奴の話に、何故こうも簡単に乗ってしまったのか。
きっとあの時の俺は、『カード』を見せてもらったその先のことなんて考えてなかったんだ。



モ「綺麗な家だな」
シ「そうか?」

シルクが玄関のドアノブに手をかける。

シ「…入って。」
モ「おい、お前手震えてね?」
シ「………いや?」

間が気になる。

モ「…?まぁいいや、おじゃましまーす」

俺はとても安易にシルクの家に上がり込んだ。

コイツがこれから何をしようとしているかなんて、何一つ知らずに。






……To be continued.

プリ小説オーディオドラマ