第7話

伍《巣食う者》
152
2020/05/11 03:45
山 田
山 田
っ……さむ……
あ な た
あ な た
……もう少しで着きますから。


タクシーで神社へ向かう道中

身体を震わせ寒がり始めた山田

奴が嫌がっていた

確かに”そいつ”は山田のなかに

取り入るのが目的だけど

神社の敷地内でそれを行うと

”そいつ”が山田に取り込まれる形になり

自由が効かなくなってしまうのだ



山 田
山 田
……すげぇ
あ な た
あ な た
……伊野尾さん家です
山 田
山 田
へ?!
あ な た
あ な た
……神社の次期神主なんです
山 田
山 田
…え、マジで言ってる?!


目の前にそびえ立つ

大きな鳥居を前に

唖然とする


あ な た
あ な た
お願いがあります
山 田
山 田
…や、もう火にはさわりませんよ
あ な た
あ な た
違います
山 田
山 田
あ、はい
あ な た
あ な た
この鳥居をくぐって,もし,体が暑くなってきても、決して上着を脱がないでください
山 田
山 田
…あ、はい
あ な た
あ な た
絶対に。約束してください
山 田
山 田
わ、わかりました


約束事を交し鳥居をくぐると

少しして山田が暑がり始めた



山 田
山 田
……あっつ…
あ な た
あ な た
ダメですよ
山 田
山 田
……はい


長い砂利道を抜けると

大きな木が生えた庭に出た




山 田
山 田
…庭園じゃん…


その光景に唖然としていると

庭を繋ぐ石橋から

伊野尾が呑気に歩いてきて



山 田
山 田
あ、…ども
伊 野 尾
伊 野 尾
指、大丈夫?
山 田
山 田
っあ!!…これ…あ…れ?


さっきまで黒く

焦げ付いていた指先が

跡形もなく元に戻っていた事に

驚く


伊 野 尾
伊 野 尾
大丈夫そうだね
山 田
山 田
へ、どーゆー事…
伊 野 尾
伊 野 尾
早速だけど,そこにあるでっかい木の前に立ってもらっていい?
山 田
山 田
………はい


訳の分からないまま

そびえ立つ樹木に近づくと

突然,風が吹いてる訳でもないのに

大きく揺れ始め



山 田
山 田
?!
伊 野 尾
伊 野 尾
あら、怒ってるねぇ
山 田
山 田
…や、まじでなんなんですか!!これ
伊 野 尾
伊 野 尾
大丈夫!!大丈夫だから,木に触ったら絶対離さないで!!
山 田
山 田
はぁ?!
伊 野 尾
伊 野 尾
木に触れたら離さないで、わかった?
山 田
山 田
……っ…なんなんだよ…


相変わらず揺れ続ける木に

どん引きしながら

木に触れると

少しして山田に異変が起きた



山 田
山 田
あ……あつい,あつい!!あついあついっ…あっつい!!


どうやら身体中が燃えるように暑いらしい


伊 野 尾
伊 野 尾
離すなよ、離したら死ぬかんな
山 田
山 田
っ……くっ…


その場で目を瞑ると

何かを呟き念じ始めた伊野尾

目の前では山田が冷や汗をかきながら

もがき苦しんでいた


山 田
山 田
あつ…あつい…あついあついあつい!!


その内呼吸の乱れた山田が

異常な叫び声を発すると

糸が切れるように

その場に倒れ込んでしまった



あ な た
あ な た
っ……山田さ…
伊 野 尾
伊 野 尾
…大丈夫。気失ってるだけだから


横たわってしまった山田

後から駆けつけた岡本と知念が

いくら探してもここにたどり着けなかったと

奇妙なことを言い始めた



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