第40話
タクシーで
私の頭の中は大変な事になっていた!
ホテルに着いたらどうするの?
準備とか、全然できてないのに!
そんな事より、アイドルとしてだよ!
慌てふためいてる私とは違い、
余裕な大吾。
どうして?
何が大丈夫なのか分からないっ!!!
大吾のデビューが、遠のいちゃったらどうすんのよ!
せっかく、、、なにわ男子 推されてるのに…
今の勢いを、失わせたくないよ…
任せる…?
身を任せるってコト?
そういう意味なの?
あ"ーーーーもぉーーーーッ!!!
だいぶパニックな私の頭の中。
それなのに大吾は…
冷えた私の手を握り、
そう言って自分の膝の上に乗せた。
言った割には、少しも私を見なくて…
窓の外を、ずっと眺めている大吾。
照れてるのか、困ってるのか…
読み取れなかった。
外を見ながら、そう言った大吾の声色は、
なんだか震えていて…
私の手を、もう少しだけ強く、
ギュッと握った。
返事も出来ない私は、
手のひらから伝わる大吾の温もりを感じ、
懐かしい その温かさに…
こんな優しい大吾なら、
流されても…
いいのかな…
悪いコトへと手を伸ばしている感覚…
あの頃は、もっと素直に、
大吾の胸に飛び込めたのに…
大人になるって…
なんだか損だな…
怖さを打ち消すかのように、
大吾の手を、強めに握り返した。
手…握り返したくらいで、
そんなに戸惑わないでよっ!
決心、、、揺らいじゃうよ…
そうやって、誤魔化しながらしか いられなかった。
そんな心境だった。
帽子のツバを目深に下ろしタクシーを降りると、
私たちは足早にホテルの中へと入り、エレベーターホールへと一直線に進んだ。
ただそれだけなのに、
私は、前を行く大吾の背中を見失わないように必死だった。
帽子のツバで視界が悪いせい?
いや違う…
後ろめたいから。
ピンポーン♪
と呟きインターホンを鳴らした大吾。
えっ?? なんで鳴らしてるの?
誰か居るってこと?
なになになに??
もぉ! ワケわかんないっ💦
状況が掴めず、少し潤んできた瞳で、大吾を見上げた…
大吾はそう言って、そんな私の帽子のツバを、
顔を覆うほどまで、イタズラに下ろした!
部屋からは「 は~い 」と元気な声が聞こえた…
えっ… もしかして…