第3話

君と見た夏。
1,059
2018/03/12 14:22
テオ
じんた、ん…?
そこには死んだはずの見慣れた相棒が立っていた。

夏だと言うのに少し大きい長袖のパーカーを来ていて、ジーパンを履いている。

俺は何度も何度も目を擦る。

間違い無い、じんたんだ。
じんたん
テオくん…っ、た、だいまっ…
俺はじんたんの元へ走っていく。

そして思いっ切り抱きついた。
テオ
じんだ…ん…うぇ、…ひっく…
おがえり…ふっ…うぇ、んっく…
俺は必死に堪えていた涙をボロボロと零す。

じんたんが返ってきた。
いつものように、元気な姿で。
あの時のまんま。
じんたん
でぉぐん…っ、ごめんね…寂しがっだよね…辛い思いさせちゃったよね…
独りで頑張ったね…ありがとう
テオ
ホントだよ… 
俺、まいにぢ、毎日、すげぇ寂しぐで…
辛ぐで…でも!じんたんが!見てくれてるって…わかってたから…うっ、ん、ぐ…
毎日本当に辛かった。
じんたんがいない世界はまるで色が褪せてしまったような感覚だった。
でも、でも…もう1度、俺の元へ帰ってきてくれたじんたん。
嬉しいのこの上ない。
じんたん
テオくん…聞いて?
あのね、今日戻ってこれたのは、多分お盆だからなのと、
俺にやり残したことがあったからだと思う
テオ
やり、残したこと?
じんたん
そう。
あと、俺がここに居られる期限はお盆の間だけ。その間にぜーんぶ終わらせなくちゃいけない
お盆の間って…
たったの3日しかないじゃないか。
そんな短い間でやり残したことなんて終わるのだろうか…
テオ
わかった。なんでも協力するから。
一緒にやり残したことが無くなるようにしよ
俺がじんたんにかけられる言葉はそれくらいしかなかった。
じんたん
ありがとう。テオくん
じんたんとの短い3日間が始まった。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
テオ
えっと、まず何すんの?
俺はじんたんに聞いた。
すると
じんたん
えっと、まずみやに会いたいな
確かに、みやは俺たちを巡り合わせてくれた大切な親友だ。
すぐに了承して、みやの家へ向かった。
ピンポーン…


チャイムを鳴らすと、みやはすぐ出てきた。
みや
テオくんどしたん?って…え?
じんたん
みや、久しぶり。会いたかったよ…
みやの細い目は、これ以上ないくらいに見開かれたと思ったら、すぐに細くなり、大量の涙を流しながらじんたんに抱きついた。
みや
じんたん…?ほんと、グスッ、にっ…じんたん…!?
じんたん
みやぁ…、俺だよ。じんだよ…
みや
会いたかった…ずっと…ずっと…
うわぁぁぁぁぁぁぁ…ん…っ
みやは号泣していた。
じんたんはみやの頭を撫でながら目を赤くしていた。
じんたん
あのね、みや聞いて。
俺、あと3日間しかいられないから…だからみやにお礼を言いたくて、
あの時、みやが声を掛けてくれなかったら俺たち、スカイピースはできなかった。
本当にありがとう。
みやは俺の人生を変えてくれた人だよ。
ずっと、ずっと…忘れないで。
大好きだよ、親友。
みや
うん、うんっ…俺も…っ、大好き、だよ…
2人は固く抱きしめ合い、最後の言葉を交わした。
じんたん
じゃあみや、元気でね。
空から聞いてるから、みやの歌。
みや
おう!最高の曲、聞いててよな?
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
次に、じんたんの両親の元へ行った。
テオ
おばさん、こんにちは
じんママ
あらテオくん…どうしたの?
テオ
あの、実は…
じんたん
母さん
俺の後ろからひょっこり現れたじんたん。

じんママは驚いたあと、よろよろとじんたんへ近づいていく。
じんママ
じん…?じんなの?
私の…大事な…じん?
じんたん
ただいま
じんママはその場に泣き崩れた。

じんたんは背中を擦りながら優しく言う。
じんたん
俺ね、あと3日間しかここにいられないから。最後に感謝の気持ち伝えに来た。
今まで本当にありがとう。
母さんのおかげでここまで生きられた。
母さんが生んでくれなかったら今の俺は存在してなかった。
本当にありがとう、大好きだよ母さん
じんママは頷きながら、涙を流していた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
テオ
今日はもう遅いから、スカイハウス行こっか
じんたん
そだね!意外と歩き回ったなー!w
じんたんは軽い足取りで歩いている。

みや、じんママ以外にも沢山の人へ感謝の気持ちを伝えに行った。
テオ
そういえばさ、じんたんは幽霊…なのに皆から見えんのね。
俺のイメージだと、全く見えないのかと思ってたから
じんたん
あー、多分なんだけど
明日は触れなくなってるかも…
テオ
え!?なんで!?
じんたん
今日は来たばっかりだから、人間としての力は残ってんの。
でも明日は今日より弱まってるはずだから…
テオ
そっか…じゃあさ、
明日はスカイピースで動画撮ろ?
じんたんが映るかはわかんないけどね
じんたん
…そうしよ!
よっし!明日も頑張ろー!
じんたんが思いっきり夕暮れの空にピースをする。

俺はそれを見てあの頃の懐かしさ、そして胸苦しさを覚えた。



じんたん、俺、辛いよ。
あと3日経ったら消えちゃうんでしょ?
俺、耐えられるかな?
テオ
でも…じんたんが笑ってくれるなら…
俺はそう呟いて、空にピースを掲げた。





じんたんとの時間、あと2日。
……To be continued

プリ小説オーディオドラマ