「つらいこと...」
思わず声に出して言ってしまう。
結婚式の場で辛い思いをしているのは私だけじゃなかった。
でも、なんだろう。辛いことって。
「気になります?辛いこと、」
「いや、あの、....はい。」
辛いこと。話させるのは失礼かも、と思ったけど、この際だから聞いてしまおう。
「僕...好きだったんですよね。結衣さんのこと。」
結衣。私の姉の名前だ。
好きだった人が自分以外の人と結婚。
まさか。これって、私と同じ状況だ。
自分が抱えていた苦しみが自分だけのものではないと分かった喜びで、自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
「そうなんだ...。だから煙草を...。」
「今更後悔したってもう遅いんだよね。分かってるんだよ...」
膝に肘を乗せ、両手で顔を覆う男性。
私はたまらず、口を開いた。
「私も好きでした。翔さんのこと。」
翔さん。私が人生で一番好きだった人。
私の姉の夫になる人。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。