第7話

無くてはならないもの
88
2020/07/23 06:41

「麦」

「うん?マネージャー、どうしたの?」

ようやく収録が終わって、少し経ったところ。
マネージャーがお茶を差し出してくる。

「お疲れ様、これ差し入れね。
…それと、スケジュール表」

「わ、いつもありがとう〜、さっすがマネージャ〜」

「ん、明日は休みだから。」

「…え」

明日はCMの撮影入ってたはず…。

「急な仕事入っちゃったでしょう、
その日どうしてもやってもらいたいから、
休息をとって欲しいってクライアントのご厚意よ。」

…あ、ほんとだ。
文化祭の日の収録と、今日あるはずだった収録は
同じ会社からの依頼だ。

…だけど俺、マネージャーの事よく知ってるから。

「マネージャー、休ませてくれる為に
交渉してくれたんでしょ、ありがとう」


「…は〜、文化祭、大切な日なんでしょ。
それが潰れるんだから、明日くらい楽しんで来なさい。」

人からの親切を受け取るのは嬉しい。
心が暖かくなる。

「ふふ、その日の予定も潰さないから安心して。
じゃ、ありがとう、マネージャー」

「いえいえ」

かれこれ何年も俺を、俺らを支えてくれるマネージャー。

俺を支えてくれるのは、莎良だけじゃない。

ドアの前で、振り返る。

「本当にありがとね。」

言葉でもう一度、しっかり感謝を伝えて。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「莎良!」

ガチャ、とドアが開いたかと思えば走って
俺の元に来る麦。

「ん、おかえり、麦」

「うん、ただいま!」

…あ、いつもより上機嫌。
なんかいいもんでも食ってきたのか、こいつ。

「どうした、上機嫌だけど」

「え〜?なんだと思う〜?」

…、麦の上機嫌特有の絡み。
やたら質問したがりになるんだよな、構って
欲しいんだろうけど。

クシャクシャ、と麦の頭を撫でながら言う。

「何があったの?」

「う…答えないのずるい…」

「教えてくれなきゃわかんねぇだろ、
その為に言葉があんだから」

伝えなきゃ分からない。
相手が分かってくれる、そう思ってばかりじゃ、
何も伝わらない。
俺が麦の事を好きだと麦自身が分かっていても、
伝えなきゃ不安にもなるだろうし。

「…明日お休み貰った…から、」

少しだけ躊躇うように麦は言葉を吐き出す。

「一緒にデート行かない…?」

心が高鳴る音がする。
ストレートに想いを伝えてくれる麦が、
すごく愛おしくて。

ぎゅ、と麦を抱き締める。

「え、何、莎良?」

分かってるだろうけど。
行動だけじゃなくて、言葉でも。

「麦、大好き」

「〜っ、俺も…」

俺なんかは特に鈍感だし、こいつも寂しがりだから。

言葉は無くてはならないもの。

愛を伝える為に、絶対に無くてはならないもの。


「デート行くか、麦」

麦がハグする腕の力を強めてくる。

「うん!」


言葉は、愛は、麦は、

俺にとって、無くてはならないもの。

。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *

お楽しみ頂けたでしょうか…!

次はデートになります、!

作者は「〜っ」っていう表現が大好き。
受けくんが攻めくんにキュンキュンしちゃって
真っ赤になる所が大好きなのです。うふふ😌😌

マネージャー今回長く出てきましたね、
本名は松股 陽葵(まつまた ひなた)さんです、
マネージャーみたいな性格の人も作者は好き🥰🥰
陽葵さんは元々麦の専属マネだったのですが、
今はテディベア全体のマネさんです✌🏻✌🏻


次回は全体のアイデアが浮かんでいるので
早めに更新出来るかなと思います。

四連休の暇つぶしにでもして頂ける様に
作者頑張ります!!!

次回も「RTだけはご勘弁」をよろしくお願い致します!




プリ小説オーディオドラマ