とりあえずダイニングテーブルに向かい合って座っている私達。
どうすればいいのこの状況
グゥ
というお腹のなる音が聞こえた
私が飼い主のはずなのに、なんでこの猫……いや、この人は偉そうなんだろう
全く……
いつもこんな風に思っていたのか
立ち上がりキッチンへ向かう
カップラーメンがいくつか残っていたはずだ
それを食べさせよう
お湯を沸かせて注ぐ
カップを男の前に置けば、不思議そうに見つめている。
お箸を渡せば器用に カチカチ と鳴らした
蓋を開けてホカホカと湯気をたてるラーメンを躊躇いなく箸で掴んで口に入れた。
なんだ大丈夫なんだ。
ズルズルと勢いよく食べている隣にお茶を置いてから向かいの椅子に座って、じっくりと観察する。
よく見れば綺麗な顔をしている
まぁそれは当たり前か。
ウォヌは美猫だから。
気づけば食べる手を止めて目が合っていた
器の中を見ればスープまで綺麗に平らげている
元々は猫と言えど、今の見た目は立派な成人男性だ
抱きしめて顔を埋めるだけと言っても意味が違う
ガタリ と立ち上がって私の手を掴む
細いのに力があり、勢いもあって解けないまま引っ張られていくと、ソファに向かって歩いていく
ボスンとソファに座り両腕を広げて私を見つめている
来い ということか。
後ろに後ずさろうとした私の腕を再度掴んで今度は引き寄せた
思わず瞑った目を恐る恐る開ければ、至近距離に彼の顔がある
ギュッ
っと抱きしめられた
彼の首筋に私の顔が埋まる体勢になり、久々に自分ではない人間の肌の感じと温もりを感じた
やらなければ離してくれないだろうと思い、決心してその首筋に擦り付く
すると甘えるように私の顔の横にも彼の顔が擦りついてきた
初めて聞いたはずの低い声
なのにその声の中には 労いと優しさ、そして少しの甘さが含まれているのがしっかり分かる
その声と優しくさすってくれる手の温もりに安心した私はそのまま意識を手放した
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。