第2話

2話
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2021/08/28 03:16
それから、その子の話を聞くだけやなくて
その子と会話をするようになった
大分と長いこと喋ってたけど、木の裏におる俺には全然きずく気配はなかった
その子の名前は知ってたけどなんて呼んだらいいんかが分からんかったから
適当に流してたら、改めて自己紹介を受けた
『ウチ、あなたの下の名前って名前なん!』
「そう、あなたの下の名前ちゃんか、ええ名前やな」
まぁ全然知ってたんやけど、全然今知りました〜みたいな風に返してみる
『あなたの下の名前って呼んで欲しい!』
「あなたの下の名前」
初めて名前呼んだな、
『何?神様』
あなたの下の名前は俺の事神様やと思っとったから
俺のホンマの名前なんか教えられへんかった
「いや、やっぱなんもない」
月日が過ぎた
毎日懲りずに神社に足を運んだ
ある日突然あなたの下の名前から告げられた言葉があった
『ウチ、転校することになった』
「……そう」
「なんや、寂しくなるなぁ」
『うん、ずっと見守っててくれる…?』
『ずっと一緒…?』
「そうやなあ」
ずっと一緒な訳が無い
俺は人間やから空気中からあなたの下の名前のことを見守るなんてできひん
引っ越してもたら、もう多分一生会えやん
「…どこに引っ越すん?」
『えっと…「さんもん市?」ってとこ』
「さんもん市」?どこやねん  そんな市あるんか
「「さんもん市」ね〜」
『うん、神様しってる?』
「知ってるで、昔そこの神様と知り合いやってん」
『ホンマに!?』
嘘に決まってるやろ、ほんまに騙されやすい奴やな
「うん、ホンマに」
『じゃあそこの神社通ったら、そこの神様とも話せる…?』
「それは難しいかもしれへんなぁ」
『じゃあなんで神様とは話せるんやろ?』
「それは俺にもわからんなぁ〜」
『神様でも分からんことってあるんやな!?』
「そらあるんとちゃう?」
「あなたの下の名前〜? もう時間やで〜」
「あ、お母さんや」
『じゃ、バイバイ!神様』
『もしこっち帰ってくることあったら、絶対ここ来るから!』
「あ、待っ、て」
最後に俺の事、ホンマのことを言おうと思った
俺は神様でもなく、ただの人間やてゆーこと
色々、今まで嘘ついて騙してたこと謝ろうって
最後に「神様」やなくて俺の名前「敏志」って1回でいいから呼んで欲しかった
『ん?何?』
「あ、、、」
「やっぱ、なんでもない」
俺はやっぱり言うのをやめた
その時一瞬見えたあなたの下の名前の顔が今でも忘れられへん
涙でぐちゃぐちゃになった顔、真っ赤な目、口の辺りまでたれてる鼻水
声だけやったら、全然そんな感じはせんかった
あなたの下の名前は笑顔でお別れをしようとしてるのに
今俺があなたの下の名前の前に出たら俺は多分泣いてまう
そう思った
「ほなな、「さんもん市」でも元気でな  あなたの下の名前」
『うん!バイバイ!』




俺はもうあの神社には毎日通わんくなった
そんな時、俺にスカウトの話が来た
三門市でボーダー隊員…か
「なぁ水上引っ越すってホンマなん!?」
「ん、まぁな」
「まじで… 」
仲のいいクラスの友達が話しかけてきた
「俺、さ゛ひ゛し゛い゛」
「はいはい」
「まぁ連絡先も知ってるし、また会えるやろ」
「まぁ、そうやけど…」
「どんなとこに引っ越すん?」
「こんなとこ」
「何ここ、「さんもん市」…?」
「!?」
「ごめんやけど俺聞いたことないわ」
「アホ笑」
「「さんもん市」やなくて「三門市みかどし」ってよむんや」
「へ〜そうなん」
「あと、でかしたで」
「ん?俺?」
「お前以外に誰がおんねん笑」
「まぁそやな笑」




俺はその日久しぶりにあの神社に足を運んだ
もしかしたらここの神様が、俺らをもう1回合わせてくれるんやないか、そう思った






柄にもなくワクワクしながらやってきた三門市
あなたの下の名前も三門市でボーダーやってたみたいで、無事に再会をはたしたんやけど、
まぁあなたの下の名前は俺の姿を見たこともないし、普通に1から友達になった
次は俺の事、「神様」じゃなくて「水上」って呼んでくれるようになった

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