LAN side 〜past story 〜
過去の記憶。
それが、目の前に、
ありのままに浮き出てくることがある。
退院して、もう居ないはずのこさめ。
手を伸ばそうとしても、触れられない。
過去の俺の、醜い作り笑いが見えるだけ。
耳の遠いおじいさん。
囲碁が好きで、いつもホールでやってるけど…
ガシャンという音と同時に、
ホールに白と黒のシャワーが降った。
歩行器を使っているのに、1人で碁盤と石を運ぼうとするから落としてはいつも皆で拾っている。
なんだか恒例行事になっていて、少し面白い。
こえくんの屈託のない笑顔。
もう病院にはいない、こさめの晴れた声。
…どうしてこの記憶が蘇ったんだろう、
おじいさんにぶつかりそうになって、避けたら今度はれるちがオセロを落としてしまった。
また、ホールの床が白黒に…笑
そうだ、みんなで探したんだっけ…
もちろん俺も手伝いたいが、記憶の中だから身動きはできなかった。
あと一つだけなのだが、なかなか見つからない。
確か、このあといるま先生が…
本当にそう思ってるわけじゃないだろうし、皆と一緒に探してくれたんだ。
…本当にいい先生だな、
もう聴けなくなった、こさめの声。
それを最後に、記憶が閉じた。
現実に引き戻され、廊下に出て隣の部屋、
…こさめが居た、部屋の名札を見た。
修学旅行が終わるまでは「外泊」扱い、
無事に終わればそのまま退院。
そんなこさめの名前は退院してから数日後、
桜の棟からふわりと消えていった。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。