三分ほど沈黙が続いただろうか?
私は重い口を開く。
「嘘…。私の両親は…事故で死んだって…」
「えぇ。知ってるわ。だから、貴方が育った施設の人間に聞いてみたの。そしたら、貴方を気遣って嘘を付いていたらしいわ。証拠としてその時の音声も撮ってある。」
そう言って、友人は証拠の音声を流し始めた。
懐かしい声から、私の知らない事実がどんどん述べられていく…。
私は混乱した。
「…混乱しているところ悪いけれど、発覚した事実はそれだけじゃないのよ。」
「え…」
「…赤子の貴方が、産まれた病院から退院した日、貴方を抱えた少弐夫人の実姉が、少弐夫婦の手によって交差点に突き飛ばされ…トラックに跳ねられて亡くなったわ。」
「そんな…」
私が一昨日夢で見たのは…母の死では無く叔母の死だった様だ。
ここでようやく、私は今日送られてきた大量のLINEの意味を理解した。
「詩織…とりあえず今日はもう寝なさい。
突然の事で混乱しているでしょう?
一旦落ち着く必要があるわ。」
そう言われ、電話は切れた。
翌日、私は仕事を休んだ。
午前中は動くことさえままならなかった。
私の世界観は一気に変わってしまった様な気がする。
しかし、午後になるとそれにも慣れてきた私は、少弐君を助けられないか考え始めた。
血の繋がりがあると知ると、今までより一層情が湧いてきてしまったのだ。
それにともう1つ、夢の中に、彼の絵が出てきてしまったから…。
彼の絵をもっと見たいと思ってしまったから…。
夕方になると、友人から電話がかかって来た。
「どう?落ち着いた?」
「えぇ。一応ね。」
「それで?調査結果を聞いて、貴方はどうしたいの?」
「私は…」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!