第6話

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2020/05/22 12:00
「実は…僕には6歳離れた姉がいるんです。孤児院に預けられたらしいですが…」
「え?どうして?」
私は思わず尋ねる。

その言葉は私の心に動揺を与えた事は良く覚えている。
「僕…自分で言うのもあれですが、大企業の社長息子じゃないですか…。僕の家、嫁は跡取りの長男と補欠の次男を産む為だけの奴隷。不要な娘が産まれたら施設にだして息子にかけられるお金をできる限り増やす。みたいな考えがありまして…それで長子であった姉が孤児院に連れていかれたらしくって。」
「なるほどね…それで私がもしかしたら少弐君の姉かも知れないという思考に辿り着いたのね。でも、私は確かに孤児だったけれど両親は不慮な事故で亡くなったと聞いているわ。多分人違いね。」
「そうですか…珍しい苗字ですし、もしかしたらと思ったんですが…。」
若干しょんぼりした少弐君を見て、私はふと「まぁ、でも…」と繋げてしまう。
「少弐君みたいな弟がいたら、楽しそうだな…とは思うわ。」
それを聞いて、少弐君は「本当ですか?」と、目を輝かせながら言った。

私の中では冗談半分の言葉だったのだけれど、こんなに笑顔で喜んでくれるのならばそれはそれで嬉しいものである。
「それにしても…少弐君の家は本当に酷いわね。息子は監禁に近い状況下で無理に勉強させ、娘は施設送りだなんて…。仕舞いには嫁を奴隷扱い。そしてそれに文句を言う人を権力の力で捩じ伏せる…。まるで悪魔ね。」
そう言い切ると、少弐君が俯いた。

私は慌ててさっきの発言を訂正した。

てっきり、自分の家を酷く言われて嫌な思いをしたのかと私は思っていたが、それは少弐君から発された「僕も、僕の家族は異常だと思います」と言う言葉で、彼は今までの人生で人生で歩いてきた道は自分の思った通りおかしなものであると確信し、変わるための決心をしたのだと察した。
今まで、親が居れば幸せなものかと思って来たが、彼を見ていると、「家族だけが幸せの形ではない」と悪い意味で実感させられた。

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