第3話

1話
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2020/08/26 07:51
 俺は、平凡な男子高校生だ。

 言葉にしてそう言うと、実は何かあるのでは無いかと勘ぐられる。転生がどうだとか、チート能力がどうだとか。

 だが、本当に何も無いのだ。これと言った才能の無い、一般人。

 言い換えれば、平和で良いともとれるのだろう。

 朝起きて、学校へ行って、友達とバカをやって、家に帰り、眠る。正直に言って楽しいし、終わって欲しくない毎日だ。

 しかし、勿論ながら不満だってある。学校には友達と会いに行っているようなものだから、出来ることならつまらない授業も受けたくない。

 机に突っ伏して寝たり、屋上へ行って騒いでいたい。だが、それをする覚悟は無い。

 平凡という事は、中途半端ということでもある。特になんの決意も無く、覚悟も無く、ダラダラと毎日を過ごす。

 焦りは感じていなかった。むしろ、皆こんなもんだと思っている。漫画のような人生を過ごすのは、ごく一部の限られた人間だけなのだ。

 そして俺は、限られた人間では無い。ただそれだけ。

 そんな現状を思いながら、自販機でホットコーヒーを買う。手に持っただけで熱く、とてもすぐに飲めそうにない。

 冬だから暖かいのは良いけれど、熱いのは嫌なんだよな。缶で熱いのを飲むと、火傷しそうだし。

 心のなかで文句を言いつつ、能力を発動させた。


熱源操作クールダウン


 それが、俺に与えられた能力。

 物の温度を下げることが出来る。ただ生物には使えず、せいぜい火傷防止くらいにか役立たない能力だ。

 テレビでは、もっと凄い能力を持った人間ばかりが取り上げられる。凄い能力を持つ者は、凄い才能を持つことが多い。

 能力と言うのは、その人間の才能の有無を表しているようなものなのだ。

 逆に言えば。

 どうでもいい能力を持っている奴は、大抵才能が無いのである。

 俺みたいに、な。

 自嘲気味に笑って、缶コーヒーを啜る。人もいない、夜も遅い帰り道だからだろうか、少し気が緩んでいた。

 だからだろうか。

 一瞬にして周囲が明るくなっても、俺はバカみたいに突っ立っていることしか出来なかったのである。

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