「……なんか、先生のまで開示?されたんだけど」
「さっきそんなこと言ってたからな。情報の開示を宣言さえすれば、どんな状況だろうと見ることが出来るんだよ」
そして、言われるがままに情報の詳細を見ると、確かに金井さんと神屋坂さん、それから梅原先生の情報が載っていた。
生年月日などの細かい部分は非公開だが、年齢や能力については詳しく見ることが出来た。こんな物があるとは知らず、感心していると、金井さんが悪戯っ子のような顔で耳打ちしてくる。
「実はな、それはスクードに勤務してる奴にしか配られないんだよ」
「えっ!?じゃあなんで俺に……」
「まぁ、とりあえずここを見てみろって」
そう言って金井さんが指したのは、『フリーランス』の一覧。そこには梅原先生だけでなく、もう一人の情報が表示されていた。
名前も年齢も載っていないが、能力についての詳細だけが載っている。これは、もしかして……
「さっきの殺し屋、ですか?」
「ご明察!多少は身を守ることに役立てればなって寸法だ」
「あの、すみません。情報表示の基準がよくわかんないんですけど……」
あの殺し屋は開示する旨は言っていなかったはずだが、能力の情報はしっかりと表示されている。これは何かしらの基準があるということなのだろうか?
「あぁ、一度見たことがある能力については、自動で登録されるんだよ。逆に、能力の情報は目の当たりにするまで登録は出来ないんだ。ちょっとめんどうなシステムだよな」
なるほど、と思って他の人の欄を見直すと、神屋坂さんのページに飛んだ。おかしいな、神屋坂さんの能力はまだ見たことがないけど、しっかりと表示されている。
首を傾げていると、それを察したのか神屋坂さんが説明してくれる。
「俺の能力は常時発動型だ。今も発動してるぞ」
「えっ!?あ、道理で……」
能力詳細から能力を知り、今までの影の薄さに納得がいく。影薄いですね、なんて口が裂けても言えないけれど。
一通りの話が終わったのか、二人がカバンを持って立ち上がる。割と仲良く出来ていたつもりだったので、どこか寂しさを覚えた。
しかし、二人は当たり前のようにこちらを振り返り、『ついてこい』とばかりの視線を送ってくる。
意味が解らず立ちすくんでいると、金井さんがはっと気が付いたような表情になった。
「そうだ、まだ言ってなかったな!」
「え、あ、何がですか?」
困惑している俺とは裏腹に、金井さんは快活に笑う。
「あなた君にはこれから、うちに住んでもらうことになった!」
「え、金井さんの家にですか!?」
驚きのあまり大声を出してしまった。慌てて口を抑えながら金井さんを見ると、面白かったのかクスクスと笑っている。
「違う違う、もっと安全な所だよ」
それだけ言って、詳しい説明も無しに部屋から出て行ってしまった。そんな金井さんの尻拭いをするように、神屋坂さんが言葉を継ぐ。
「全くアイツは……。俺たちの本部だよ」
つまり、スクード本部と言うことだ。
「……本部ぅ!?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。