第7話

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2,912
2020/07/20 11:32
それから、図書室には行かなくなった




テニスコートにも




けれど、ある日




友達に替りに本を返しておくようにと頼まれた




正直、行きたくなかった




あなたがいるから
時透無一郎
時透無一郎
さっさと済ませて帰ろ………
時透無一郎
時透無一郎
失礼します………
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
あ!時透くん!
相変わらず、一人で本棚整理をしているあなた




明るい声で話しかけてくる
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
最近来ないからちょっと心配だったんだよ?
時透無一郎
時透無一郎
………あなたさ、彼氏いるんでしょ?
他の男にそんなこと言っちゃダメだよ
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
あぁ、その事なんだけどね………
時透無一郎
時透無一郎
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
実は……別れたんだよね……
時透無一郎
時透無一郎
えっ?!なんで?!
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
浮気だよ
同じ学年の女子と浮気してた
時透無一郎
時透無一郎
そうだったの………
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
だから、今は残念ながら独り身ですよ
ま、浮気が早いうちに分かってよかったけど
時透無一郎
時透無一郎
…………僕なら……
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
え?
時透無一郎
時透無一郎
僕なら……君を一人にすることは無いのに………
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
カァ///
時透無一郎
時透無一郎
あっ……その………
気がつけば、そんなことを口走っていた




いつかポロリと言ってしまいそうだ




好きだって




愛してるって




前世のことも、全部




あの日約束したことも────
時透無一郎
時透無一郎
ごめん……今のはその……違くて………
いや、違くない




でも、肯定してしまえば、関係が壊れる




そう思ってしまった
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
あっ、うん、そうだよね
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
時透くん人気だから、びっくりしちゃった
君の笑顔が見られるのなら




この関係のままでいい




けど




誰かのものになってしまうくらいなら




君の笑顔が見られなくなっても………なんて




一瞬でも思ってしまった自分を引っぱたきたい
華鶴(なまえ)
華鶴あなた
あ、本の返却だよね?
手続きするね!
早口でそう告げるあなた




手は僅かに震え、顔はまだ赤い




本を手渡した時、指先が僅かに触れ合う




あなたの肩が、小さく揺れる
時透無一郎
時透無一郎
(意識……してくれてる………?)
僅かな期待を込めた




でも、僕の勘違いなら、早く言って




もう、大切な人を失いたくないから

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