第10話

闇の中
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2018/03/24 12:26


次の日、廊下でテヒョンくんと会ったから

一緒に教室まで行った。

ふと、ジミンくんのプロフィールを思い出して、

テヒョンくんに聞いてみた。



「ねえ、テヒョンくん」

〈どうしたの?〉

「ジミンくんってさ、彼女いるの?」

〈…え?〉



その言葉を私が発したら

テヒョンくんの表情が一気に曇った。

何か変なこと聞いちゃったのかな。



「あっ、別に変な意味じゃないからね!えっと…」

〈気になる?〉

「えっ?」

〈ジミンのこと、気になる?〉



考えるより先に答えていた。



「うん」

〈そっか…多分あなたちゃんなら大丈夫だよね〉

「何が?」

〈これは秘密だよ〉



私は何か知ってはいけない事を

知ろうとしているのか。

そんな気持ちが込み上げてくる。



〈放課後、屋上ね〉



そう言うとテヒョンくんはいつもの笑顔で

みんなのもとへ向かっていった。




















屋上に着くと、もうテヒョンくんは来ていた。



「ごめん。遅れた?」

〈ううん。大丈夫だよ〉



ここに座って。

そうテヒョンくんが言ったから

木のベンチに腰掛けた。

テヒョンくんは私の隣に座った。



〈話していい?〉

「…うん」



こんなテヒョンくんの顔見たことないから

凄く不安になった。

でも、ジミンくんの事が知れるなら

そんな事、大丈夫だと思える。















〈ジミナの秘密。それはね…〉




〈ヌナが亡くなった事を信じてないこと〉



ヌナ?

亡くなった…?



〈ヌナはジミナの彼女だった。でも一年前、ヌナはジミナの目の前で、車に轢かれて亡くなった〉

「…うそ。そんな…」

〈でも、ジミナはそれを分かっていない。いや、分かってないんじゃない。受け入れていないんだ〉



じゃあ、あのプロフィールの写真は…

ジミンくんの亡くなった彼女…



〈だから毎日寂しそうに、ヌナを一人で思ってる〉



衝撃が強すぎた。

言葉も出ない。



〈放課後の教室にいるのもそのせい。教室はジミナがヌナに告白した場所〉



だからか。


初めてジミンくんを見た日。

あの時の表情は彼女さんを思って…

次から次へと

バラバラだった出来事一つに繋がっていく。

それが、どんなに辛く悲しい出来事で

その出来事がジミンくんを縛っている。



〈ジミナはヌナを凄く愛していたから、それだけショックが大きいのはよく分かる。でも、俺はそれが心配なんだ〉

「それはどういうこと…?」

〈ジミンがいつか壊れてしまうんじゃないかって、自分の命を絶ってしまうんじゃないかって、この闇から抜け出せないんじゃないかって…〉



親友って、思ったより辛いのかも。

相手のことを一番に分かっているが故に

助けられない辛さや、救えない葛藤が

友達以上にあるのかも知れない。



「テヒョンくん、ありがとう…」

〈ううん。あなたちゃんには知って欲しかったから〉

「ジミンくんの事、私、全然知らなかった…」

〈俺も、本当のジミンが分からない…〉






私たちはジミンくんを救えるのかな。


この闇の中から。

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