第77話

乱世の姫ルート︰其の弐拾
883
2021/06/19 11:24
呼吸が浅くなる




ああ……終わった…………




結局、何も出来ないまま……




炭治郎様は、目を合わせようともしない




それがさらに、絶望を掻き立てた
竈門炭治郎
竈門炭治郎
……ご覚悟を
竈門炭治郎
竈門炭治郎
………………公方様!
ズシャッ!
童磨
童磨
っ!?
松宮(なまえ)
松宮あなた
ぇ……
童磨
童磨
いっ………炭治郎……何をするのかな…?
竈門炭治郎
竈門炭治郎
一思いにと思ったのですが……
童磨
童磨
………………
童磨
童磨
ふふっ……あははははは!!
童磨
童磨
そうだよねえ!炭治郎だもんね!!
一度俺を裏切っていたもんねえ!!
竈門炭治郎
竈門炭治郎
……………
松宮(なまえ)
松宮あなた
炭治郎様……
松宮(なまえ)
松宮あなた
(どうして今……宇随軍は壊滅状態なら、わざわざ不利な方に寝返るのはおかしい………)
松宮(なまえ)
松宮あなた
(…伏兵………?
それに……不死川や煉獄は…………)
宇髄天元
宇髄天元
おう、やーっと戻ってきたか
時透無一郎
時透無一郎
ほんとだよ
竈門炭治郎
竈門炭治郎
遅くなって、申し訳ありません
その言葉を合図にしたように




地面がガタガタを震え始めた




地震……違う………




蹄の音、馬の嘶き、そして………




無数の甲冑が揺れる音
松宮(なまえ)
松宮あなた
水色の桔梗の……旗印………!?
そう、炭治郎様の兵だ




煉獄の赤備え、不死川の毘の文字もある
童磨
童磨
………そう、皆して俺を裏切るんだ
松宮(なまえ)
松宮あなた
なっ……なぜ……炭治郎様の兵が!?
宇髄天元
宇髄天元
お前聞いてねえのか?
宇髄天元
宇髄天元
松宮家を見張るって口実で、兵を半分隠してたんだよ
松宮(なまえ)
松宮あなた
松宮家を見張る…………
松宮(なまえ)
松宮あなた
(……あの時の………)
童磨
童磨
あーあ、酷いよねえ、杏寿郎も実弥も
不死川実弥
不死川実弥
酷いのはどっちだろうな
錆兎
錆兎
……これで、公方様二百、我々は三千………兵力の差は歴然だ
悲鳴嶼行冥
悲鳴嶼行冥
まともに戦えばどうなるか……
貴殿なら分かるだろう
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
どうか降伏を、公方様
松宮(なまえ)
松宮あなた
行冥………!
悲鳴嶼行冥
悲鳴嶼行冥
お待たせを致しました
童磨
童磨
……君が死んだって報せも、嘘だったんだね
錆兎
錆兎
我々で匿っていた
不死川実弥
不死川実弥
不本意ながら、な
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
俺もだ。
行冥殿はともかく、不死川と手を組むのはさすがに躊躇した
不死川実弥
不死川実弥
はっ、安心しろ。
これが終わったら好きなだけ相手してやるよ
時透無一郎
時透無一郎
ちょっと……何そっちで戦おっぱじめようとしてんの
童磨
童磨
けどさ、俺にも兵はあるんだよ。
今頃安土を、俺の兵が囲ってる
時透無一郎
時透無一郎
……それは無いんじゃない?
童磨
童磨
え?
時透無一郎
時透無一郎
だって………
時透無一郎
時透無一郎
独眼竜が見張ってくれてるもんね
童磨
童磨
………嘴平伊之助か…
童磨
童磨
…………はぁぁ、こーさん
松宮(なまえ)
松宮あなた
……本当?
童磨
童磨
うんうん、俺の負け
両手をヒラヒラと上げ、おどけたように言う




それと共に、東から完全に日が昇った




空の端が水色に染まっていく頃だ
童磨
童磨
降参するからさ、ほら、
もう怖い顔やめて
公方様がそう言って右手を上げた




その時だった




背中の一点に、鋭い痛みが走った
松宮(なまえ)
松宮あなた
ぁ"っ…………
松宮(なまえ)
松宮あなた
(あ…つい………)
その場にいた全員の顔が青ざめていた




その真ん中で、妖艶に笑う公方様




地面に次々と、矢が刺さる




熱い何かが、背中から足を伝い、落ちる




そして、もう一度背中に鋭い痛みが走る




そこからも、熱い何かが伝った




視界が途端に歪み、崩れ落ちた




それを、誰かが支えた
竈門炭治郎
竈門炭治郎
あなた……あなた………!
悲鳴嶼行冥
悲鳴嶼行冥
あなた様!!
その時にはもう、視界は真っ暗だった──────

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