行冥を見送った後、自室に一度戻った
あの百人一首の入った箱を、そっと開ける
今更だけどこの字………炭治郎様?
まさか、自ら作ってくださった物だったなんて
1番上の、青色の札を取る
それを懐にしまって、蓋を閉じた
壁に持たれかけさせ、その上に私の羽織を乗せる
それから、腰につけた太刀も
その代わりに、懐刀を持った
父上の、唯一の形見
屋敷の扉を、全て開け放った
すると、庭まで一直線に見える
火薬を、羽織と刀の上に撒く
庭に出、矢に火を灯した
火矢を放つ
見事に、火薬を撒いた辺りに刺さる
一気に燃え盛る
それを見届け、裏を通って、安土城の外へ出る
かなり長い間走っただろう
城下の人混みに紛れて、遠くへ
そっと振り返ると、安土城の下の方が赤い
ここから見たら、あそこにあったんだ……
松宮あなたの屋敷が…………
頭巾を深く被り、城の反対側………
北の方角へまた進んだ
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ガサ…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。