第46話

悲劇の姫ルート︰其の拾弐
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2021/03/18 12:34
武士
おらさっさと歩け!
女性
女性
ひぃっ……!ごめんなさいっ!
幼子
痛いよぉ!お腹すいたよぉ!!
武士
びーびー泣くんじゃねえ!
徒荏
徒荏
あの…
武士
あ?
徒荏
徒荏
その方たちは……何か罪を犯したんでしょうか
武士
なんだお前。
どこぞの寺の尼か?
徒荏
徒荏
いえ、違いますよ
徒荏
徒荏
もう一度問います。
彼らは何か罪を犯したんでしょうか
武士
そんなの、我ら武士に刃向かったからに決まってんだろ
徒荏
徒荏
……ほう
武士
善逸様が何度文で上洛を促しても頷かない武家の端くれの奴らだよ
武士
見せしめで引き回してんだよ
徒荏
徒荏
そうですか………
ガシャン(袋を落とす)
武士
なんのつもりだ女
徒荏
徒荏
これで、この方たちを引き取ります
武士
………なっ……ざっと数えても
十貫あるぞ………!?
徒荏
徒荏
どうしますか?
武士
はっ、好きにしやがれ!
てめえらみたいな屑に十貫もの価値もねえがな!
徒荏
徒荏
………そうですか
徒荏
徒荏
あんたの方が価値がないでしょ
武士
んだとてめえ!!
徒荏
徒荏
私はお前を覚えているぞ(耳元で)
武士
は……?
徒荏
徒荏
5年前だったか……安土城で、よくも私を罵ってくれたな
武士
お前っ………まさかっ!
懐刀をチラつかせる




あからさまに血の気が引いていく




この懐刀には、松宮家の紋が入っている




その後、顔の布を周りに見えないようにそっと解く




すると、その武士は後ろに倒れ込んで、わなわなとこちらを見上げている




そう、こいつらは………




安土城焼け落ちは私が主犯だと主張した奴らだ
武士
き…き貴様はっ………火事で……
松宮(なまえ)
松宮あなた
ふふっ、死んで死にきれず、亡霊となって帰ってきた
松宮(なまえ)
松宮あなた
このことは、決して口外してはならない
松宮(なまえ)
松宮あなた
口にすれば、私の顔のように全身焼けただれ、天地の神が怒り
松宮(なまえ)
松宮あなた
お前たちを末代まで祟り続けるだろう
武士
お許しを……お許しを…!
松宮(なまえ)
松宮あなた
いいな?決して口外するな……散れ
女性
女性
……あ…あの………
徒荏
徒荏
ああ、大丈夫……じゃないですよね
女性
女性
助けていただき、
ありがとうございます!
徒荏
徒荏
いえ、お気になさらず
女性
女性
何か恩をお返し出来たら……
女性
女性
と言っても、私らには何もできることが………
徒荏
徒荏
ひとまず、私たちのうちへ
徒荏
徒荏
私は、戦災孤児を引き取り育てているのですが………人手が少しばかり足りていなかったのです
女性
女性
仕事を与えてくださるのですか!?
徒荏
徒荏
まあ、そういうことです
女性
女性
……夫も、両親も兄弟も殺されて………
私にはもう何の価値もないものかと……
徒荏
徒荏
価値のない人間は存在しないのですよ
徒荏
徒荏
"価値がない"と思っているのなら、
それはただ、価値を見つけていないだけ
徒荏
徒荏
神はわざわざ価値のない人間を、
この世に落とすことはしませんよ

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