5年前のあの日………
私は、奥州の小さな村にある屋敷をいただいた
ボロボロだったけど、ここなら無償でいいとの事
伊之助様には、感謝しなければ
ここに来てまずしたこと……それは…………
薬で、顔を焼いた────
私は…………松宮あなたは死んだ
死人と同じ顔をしているわけにはいかない
無一郎様に教わった薬の作り方を、記憶から手繰り寄せる
この薬は、人の皮膚に火傷跡を残す
顔の大部分………頬や額に、火傷跡を施した
激痛で、何日も眠ることが出来なかった
やがて痛みが引くと、顔の目元以外を布で覆う
こうして、私は顔を隠した
そしてこの屋敷の使い道は………
戦で親家族を亡くした子供たちを保護して
共に暮らすための場所にした
そして私の名は、徒荏────
引き取った子供たちは、約二十人
それを十人ずつに分けて、毎日生活している
まず、ひとつの組は午前に勉学の時間
その間もうひとつの組は、布を織ったり、畑を耕したりする
午後は、それを交代する
そして週に一度、織った布や採れた野菜を売りに行く
週に五回勉強、週に一度売りに行く
何もない日は、週に一度だ
1番小さい子で、まだ産まれて数カ月
1番大きい子でも、まだ八歳だ
皆、身分はそれほど高くないため、読み書きはほぼ出来ない
親に売られた子もいる
私は、絶対にそんなことはしない……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。