第4話

ともだち
260
2021/02/14 13:40

やふ


※年齢操作、過去捏造あります

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友達は多い方だと思う。
ゲームをしたり、学校帰りにカラオケに行ったりして馬鹿な話で盛り上がるのは楽しい。

でも、俺は多分どのグループにも居なくていい存在。

遊びに毎回誘われるやつがいる。お前が居なきゃ面白くねえよと言われるやつがいる。遅れて合流した時、その場の雰囲気をぱっと明るくするやつがいる。

俺はそのどれでもない。

一緒にいることを皆嫌がったりはしないけど、誘ってもらったことは1度もない。俺はそれに気付かないフリをして、努めて明るく振る舞う。

嫌われていないなら十分だろう、彼らは良い友達じゃないか。ハブられてる訳じゃない、ちゃんと輪の中に入れてもらえる。
俺はひとりじゃない。

なのにいつも、どこか寂しいのは何故だろう。


モヤモヤした日々が過ぎていく。ずっとこのままかもしれないという恐怖と共に何年も時間が経って、俺はいつの間にか社会人になった。





やふ「新チャンネル…?」


はじめしゃちょーの動画は数年前から見ている。
憧れて自分でもチャンネルを作ってみると、ますます彼の凄さが分かるようになった。
年下だけど、俺の尊敬する人物の一人だ。

そんな彼が新チャンネルを開始し、メンバーを募集すると言うのだ。年齢制限もちょうど自分に当てはまる。

少し大袈裟に言うと、運命。
そんなものを感じて応募した。慶応を受けようと決めた時よりも胸がどきどきして、苦しいくらいで、爆発しそうだった。


はじめしゃちょーから直接、合格だと電話が来て、夢みたいに嬉しくて、しばらくはあまり実感が湧かなかった。
ただひとつ、何かが変わるかもしれないという予感がした。





はじ「よーへくんっ!!ラ行きましょ!」


だい「どんどん上手くなるじゃないですか、洋平くんすごいなあ」


トマ「ようへいくん編集教えてください〜」


たな「よーへいくんもこっち来て呑みません?」



気付けば、春の陽射しのように柔らかい、夏の蝉時雨のように騒がしい温もりに包まれていた。

何気ない瞬間がどうしようもなく幸せで、時々嘘なんじゃないかと疑ってしまうけど、繰り返し降ってくる純粋な優しさや無遠慮なイタズラに安心させられる。

ここは俺の居場所なんだ。今まで感じていた居候みたいな申し訳なさじゃなくて、すごく居心地が良くて、ここを大事にしたいという気持ち。

畑は友達同士の集まりじゃないし、ずっと皆とメンバーでいられる訳じゃない。誰かが、俺だっていつか卒業するかもしれない。やっと見つけたこの場所に別れを告げなければならなくなる時は必ず来る。

でも、もう大丈夫だ。
ここを離れたとしても、きっともう前みたいな思いを抱えて過ごすことは無い。

だって皆と出会えて、ここで過ごせたから。俺はちゃんと必要とされるって、皆が教えてくれたから。
在り来りな言葉だけれど、この毎日が一生の宝物になるって確信してる。


いつか別れるその日まで、たくさん遊んで笑って動画を作ろう。

俺の初めてのともだち。



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