翌朝、もう見慣れた手紙が届けられた。
文面には、昨日よりも震えた文字で「ごめんなさい。引っ越すことになりました。」とだけ書かれていた。
だがそんなの嘘だということはわかっている。
手紙をくしゃくしゃにし、あなたは明日退院する身にも関わらず勝手に病院を飛び出した。
私を呼び止める看護師の声も聞こえた。
けれど、そんなのに構っていられなかった。否、構う理由などなかった。
あなたは気付く。
昨日受付の人に教えてもらった病院に近付くほど記憶が蘇るのを。
あなたの髪に水滴がついた。雨だ。
呑気に「会えたらいいな」なんて思った自分を今になって後悔する。
「会えたらいいな」じゃない。
【私が会いに行かなくてどうするんだ】!!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。