第5話

黒髪少年 2
92
2019/03/12 21:55
全て桂家では当たり前で通していた
小太郎は1度も褒められたことがなかった
誰かに褒められたかった
神楽 …そんなのひどいアル
近藤 …小さい頃の桂は辛かっただろうなぁ…
桂 塾に行ってきます。母上
母上 ええ。いってらっしゃい

3時間後じゅくがおわった
塾の前には小さな公園がある
遊具はブランコ、すべり台くらいだ
桂 …
桂はブランコにも乗ったことがなかった
すべり台もすべったことがなかった
少年 おーい!お前も遊ぶかー!
少女 おいでおいでーー!!
兄妹か双子であろう。そっくりな少年と少女が話しかけてくる
初めて見る顔であるのにあんなに優しく接してくれる、優しい笑顔をくれる
なんて優しい人なんだ
母上 …小太郎!
後ろから母の声が聞こえる
桂 母上…
少年 なんだ、お母さんを待ってたんだな!じゃあな!
少女 次こそは遊ぼうね!

母上 …どうしたの?小太郎。あんな庶民共と遊んで…
小太郎 …すみません
母上 あなたは…桂家の跡取りなんだから
いつも言う
跡取りなんだから
ちゃんとしなさいと
いや



自由になりたい
その気持ちが神楽達にも届いた
神楽 …
土方 …苦しかっただろうな…
そして両親ふたりが死んだ
おばあに引き取られた


俺たち2人は墓場に向かった
おばあ 一軍を率いる将として最も大切な資質はなんじゃと思う
たとえどんなに一騎当千の強者でもたとえどんなに巧みに兵を使える知恵者でも将が首をとられれば戦は負けじゃ
死ねば兵も国も何者も護る事は叶わん
ゆえに将たるは戦場で最も臆病でなければならぬ。誰より怯え誰より恐れ生き残る事が将の務めじゃ
だから小太郎。泣いてもいい、弱虫でもいい。将が生きていればお前さえ生きていれば桂家は滅びぬ
臆病者と呼ばれてもいい。生き残れ小太郎
何とののしられようがわしらはしっている
お前は立派な将であると

神楽 …

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