第3話

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2021/01/22 09:00
最初は葵なんて好きじゃなかった。
むしろ嫌いなくらいで
男ウケ狙って明るくしてバカみたい、ってずっと思ってた。
一時母が入院してて、厳しい父が家にいた時期があったの。
不運なことに、私は熱になって学校を休んだ日があった。
その時葵が連絡帳やら課題やらを持ってきてくれていた。
実は隣の隣の家だったらしく、毎日届けに来てくれた。
その時はまだ葵のこと苦手だったから、私は夕飯の時父に言ったの。
「実はあの子の事苦手なの」って
さっきも言った通り父は厳しい人でね
「好き嫌いは許さん、人なら尚更だ」
って言われちゃって
それから交友関係厳しく見られて
好きにならなくちゃいけなかった。
壁を壊さなきゃいけなかった。
けど私に壁を壊す力はなかった
与えられた小さなガラス越しに話すことしかできなかったんだ。
そしたら葵が壁を壊して来てくれてね
恋愛感情を抱いちゃって
今は自分からガラスを置いてるって感じ。
本当にどうしようもないくらいに阿呆なんだ。
憧れか恋か
わからなくなるほど恐れて
私は弱虫の馬鹿なんだ。

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