嫌い嫌い嫌い、嫌いだ。
俺は俺をフったこいつも、こいつを恋愛対象として見るあいつも
俺以外全員嫌いだ。
「さっさと告ればあ?好きなんでしょ〜?」
「...ッ、許さない!如月くん、許さないからっ!!」
葵に睨まれる。
涙ながらに強がってもなんにも怖いことはない。
「葵...っ、」
「ほらほら早く〜!」
こいつを好きになったのは顔だ。
別にフられないだろうと、ずっと思ってたのに。
「...くそ」
「あのさ、如月蒼太...アンタなにがしたいわけ?」
脳に響いた音が俺の頬を叩かれた音だと理解した時には遅かった。
「...はあ?お前、おま...なにしてくれてんの」
焦りながらも口答えをする。
「うるさい、あんたこそうちの葵になにしてくれてんのよ!」
「は、怒ってんの...」
唖然としながら煽りを繰り返す。
今なんつった?
うちの?
「...ははっ、独占欲の塊じゃん」
「りあ、りあ...」
こっちもこっちで、か
お互い様ならいんじゃね?
...許さないけど。
「はーやくっ、告りなよ。...早くさあ?」
葵に目をやると、葵は泣いていた。
当たり前だよね。こんな状況だもん。
私が告ったら1番手っ取り早いけど。
「...は、独占欲の塊じゃん」
は?
気がついたら顔を叩いてて、気がついたら喋ってて
たしかに、独占欲の塊だよな。
「りあ、りあ...」
...葵。
「はーやくっ、告りなよ。早くさあ?」
なにを思ったか、如月蒼太はいつもより楽しそうに笑って
葵を抱きしめる力を緩めていた。
「...本当はこんな形じゃ嫌だったんだけどね」
「璃亜...?」
不思議そうに私の名を呼び首を傾げる。
...かわいい。
「葵、私と付き合ってください。」
純情ちゃん。終
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!