「...はぁ」
夏休み明け、放課後の学校にて葵は女子や男子に囲まれている。
そうだった、葵もモテ女だった...。
蝉の声以前に葵の周りの奴らの声だ。
うるさい、うるさい。
葵が遠のいている気がしては尚更だ。
どうせ下心で近づいている輩もたくさんいるだろう。
私が葵に話しかければいいだろって?
無理だよ、足が動かない。
葵が遠のいているって思っちゃって
椅子と私が根っこで繋がってるみたいで
手が震えて、息が荒くなって、足が動かない。
葵、そっちは怖いよ。こっちおいで。
私、迎えに行けないから。走って、早くこっちおいで。
...馬鹿だな、私。
これじゃ束縛だよ。
嗚呼、今日も葵が遠のいていく。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!