あなたの下の名前 side
診察室の無機質な空気の中で
医師の不穏な溜め息が重く落ちた
手元に並べられた脳波のデータと
心電図の記録を指示棒で叩きながら
医師は険しい表情で真っ直ぐ私を見た
淡々と突きつけられた
警告の重さに、息が詰まる
膝の上に置いた
痩せ細った指先が、冷たく震えた
思い出そうとするだけで
頭蓋を割り裂くような激痛が走り
視界が血の色に染まる
身体が命がけで悲鳴を
上げているのは分かっていた
けれど、何一つ分からないまま
見知らぬ恐怖と憎悪に震えて
生きるくらいなら
あの暗闇の真相を知って
倒れるほうがマシだった
私をこんなボロボロにした
ナニカを伏せたまま逃げることなんて
私のプライドが許さなかった
数日後、約束通り面会室に
現れたルナの顔は、酷く緊張していた
ドアを開けるなり気まずそうに
視線を泳がせる彼女に対し
私は車椅子の上で深く
息を吐き出し、胸を強く押さえた
すでに心拍数モニタリングの
センサーが激しく警報音を
鳴らしそうになっていた
視界の端が明滅し
胃の奥から酸っぱい
吐き気が込み上げてくる
それでも、私は血の気が引いた
唇を震わせ、目の前の女性を
逃がさないように瞳で射抜く
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!