私達は産まれたときからずっと一緒だった
物心ついた時にはずっと
そばになぎくんがいた
一緒に遊んだり
喋ったり
笑いあったり……
毎日が楽しかった
なぎくんは
隣の家に住むお金持ちの子
製薬会社の社長の息子
いわゆる御曹司というやつだ
頭がよくて
静かで
クールで
ちょっと暗い子っていうのが
最初のイメージ
実際話したり遊んだりしてみると
これまたビックリ!
イメージと何も変わってない
静かで
頭がよくて
大人っぽくて
クールで
ちょっと暗い
でも見た目だけじゃ気づかなかったことも
気づくことができた
例えば
暗くてあんまり自分から喋ったりしないのに
思ったこととか自分の素直な気持ちを
そのまま私に言ってくれた
それに
すごく優しかった
私はそんななぎくんに
少しずつだけど好意を寄せていた
そんなある日
すごくイキナリだった
それから
なぎくんは学校に来なくなった
表札もあるし
車もある
引越しはしていない
インターホンを鳴らしても
凪叶はいない。
遊びに行っている。
そればかり
それである日学校で職員室に
プリントを届けた時
なぎくんのお母さんが先生と話していた
「なぎと君……本当によろしいんですね?お母さん。」
「はい…凪叶には、しっかり勉強してもらわないといけませんから。」
「そうですか…なぎと君にあちらでも頑張るように言っておいてください」
「はい。勿論です。先生。ありがとうございました」
あ!なぎくんのお母さん帰っちゃう!
このプリントを早く渡しに行こうとしたその時
リュウガクって何?
先生!
先生!
今手元にプリントがあったので
それを渡しに来たと言って
話しかけることにした。
必死に今の気持ちを抑えて
苦しい嘘だ……
どーして?
なぎくん……
どーして
何も言ってくれなかったの?
何も聞いてないよ?私……
嫌いになっちゃったの?
気がつけば涙が出ていた
止まらなかった
走ってなぎくんの家に行った
いつものようにインターホンを鳴らした
息を切らした声で
そう言われると同時に通話は途切れた
嫌いになっちゃったの?
家に入った
お母さんはいない
自分の部屋に入り
ランドセルを投げ捨て
窓を開けて
涙で今にも消えそうな声で呼んだ
叫んだ
届くかわからなかったけど言ってみた
届くと信じていたから
そう言って私は窓を閉めた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!