呆然とするテヒョンに不敵な笑みを浮かべながら、彼は近づいてくる。
え ...何、こわ.... こっち来る
身の危険を感じたテヒョンは無意識に立ち上がると後退りをしていた。
彼の手が遠慮なしに伸びてきて、テヒョンの怯えた顔を妖しく撫でていく。
旦那ではない男に触られた事に驚いたテヒョンは、思わずその手を叩き落としていた。
なに、これ ...やだ .. 何で、触られて
接触した時爪が当たってしまったのか、彼の手の甲には小さな引っ掻き傷がついてしまっている。
その男は傷口を見るとニヤリと笑い、そこに滲む血をテヒョンに見せつけるようにして舐めとった。
赤い舌の妖しい蠢きは、自ずと淫らな行為を連想させる。
テヒョンは顔を真っ赤にすると、踵を返し急いで玄関へと向かった。
これ以上ここに居てはいけない。
頭の中ではひっきりなしに警報が鳴っている。
デザインが統一された玄関で、自分の靴を探す瞳孔が震える。
しかし靴を履く一歩手前の所で後ろから捕らえられると、壁に強く押し付けられてしまった。
背中には壁、目の前は彼に行く手を遮られ、逃場を失ったテヒョンは動転してついに暴れだす。
身をよじって必死に抵抗するが、華奢なテヒョンの身体は簡単に捩じ伏せられてしまう。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
彼の口から初めて聞いた、尖った荒い口調
そう酷薄な笑みを浮かべた彼が、テヒョンの耳元でそっと囁やいてきた。
続く
♡95
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!