#家の前



グクの家を半ば飛び出すみたいに出てきて、

家の前に立ち尽くしてちょっと泣きそうな私



だって、この家には私の父親がいるから


また酒飲んでんのかな…

暴言とか浴びせられたらやってられない


変な夢見てきちゃったせいで、私ふわふわしてた

でも現実はこっち


私はグクにお金で買われただけの存在

それを忘れて、浮かれたりしちゃいけないんだ

私は涙のかわりにため息をこぼして、


狭いアパートの扉に手をかけた




ガチャ

返事がないのでリビングに行くと、父親は

空けまくったらしい瓶ビールを机に放ったまま

ソファに寝転がって寝ていた

癖みたいに呟いてブランケットを掛けてあげる


ちょっとした親切

この人が気づきもしない、親切

寝てるこの人は…なんで悲しそうな顔してるの？

気づけば頬を伝う涙


会いたい、会いたいよお母さん…



また誰かに、愛して欲しいの



そんな飢餓感を一時的にでも埋めてくれたグク

お金で繋がれた相手に依存するなんてバカみたい



だって、家族だってきっかけがあればこの有り様

お化粧、落としてないけど

お風呂は明日の朝一番で入ればいいや



夢の中だけでも、夢を見たくて

お母さんに会いたくて、お父さんに笑って欲しくて…


グクにもう一度愛してもらいたくて



私は現実から目を背けるように目をぎゅっと閉じた


せめてもの救いは、あっさり眠れてしまったこと