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第11話

悪質な営業妨害
× 

「「当てつけに営業妨害ですか?」」

「ひぃっ!」

後ろには店主の女が立っていた。先ほどと変わらず無表情のままだ。

「私にだって信念があってこのお店をやっているんです。理解していただけないようなら、さっさと帰ってください。」

それだけ吐き捨てると女の子に目線を合わせる。

「この男の話を鵜呑みにしなくて大丈夫。とりあえず、中で話を聞くわ。今日は寒いでしょう?」

そう言って優しくランドセルを押す。女の子はこくんとゆっくり頷く。その様子を横からじっと見ていると「あなたも来たければどうぞ」とついでに案内された。

× × ×

女の子の名前は、はなちゃんだった。

「私は三人姉妹で、上に二人の姉がいます。」

中学生と、小学五年生。と小さく付け足す。

「私は、お姉ちゃんたちと比べて運動も出来ないし、頭もクラスで真ん中くらいです。それでもお母さんは人それぞれだからと、お姉ちゃん達とは比べなくていいと言ってくれました。」

そう言って笑う顔にはあどけなさが多く残っている。

「でも、この前お父さんとお母さんの会話を聞いちゃって·····。」

「そうなんだ。どんな内容?」

店主はちょうど良い間を取りながらあいずちをうった。

「『女が3人は多かったから、最後は男の子でも良かったね。』って言ってた·····。」

はなちゃんの目には涙がいっぱい浮かんでいて、瞼をゆっくり閉じただけなのにボロボロと雫が溢れ出る。

その様子を見ると、店主は黙ってハンカチを差し出した。

「っ汚れ、ちゃうから·····。」

しゃくりを繰り返し途絶え途絶えの中でハンカチを断る。

「大丈夫。気にしなくていいよ。」

最初は頑なに拒否したが、店主がもう一度「いいから」とさとすと、受け取った。落ち着いてまた、話を続ける。

「私、お父さんとお母さんのこと好きなのにとても怖い。その日から何をする時でも、二人の顔色を見て行動しちゃうの。もう、疲れた·····。それでもいい子でいなきゃ、いつか嫌われちゃうんじゃないかなって。」

「それでこのお店に来たのね。」

はなちゃんは首を縦に動かした。

「私はそれを知りたくなかった。たとえばお父さんとお母さんが心の中で思っていたとしてもいい。だけどそれを言葉で聞いたことが悲しかった。」

この子の親はなんて安易な考えをしているんだ。はなちゃんがまさか聞いているわけないと思っていたのかもしれない。だけど、確かにこの子は傷ついて涙を流している。こんなに小さな女の子が親に隠れて、泣いている。

僕の頭の中は怒りでいっぱいだった。

「うん。はなちゃんは今、苦しいね。」

「とてもふあん。」

「だけど、はなちゃんの記憶を消すことは出来ないな。」

「え!?」

2人の視線が僕に集まる。どうやら声に出ていたらしい。

店主は苦笑すると再びはなちゃんを見つめる。

「確かにその言葉を聞いたらショック。私もきっとこっそり泣いちゃうと思う。

だけど、はなちゃんははなちゃんなんだよ。怖がらなくて大丈夫。そんなことで大事な過去の一部を消してしまうのはもったいない。

大人になるまで傷つくことは沢山あるけど、これは必要な傷なんだよ。」

「どういうこと?」

「直接言ってみたらいいよ。『私、男の子の方が良かったって話しているのを聞いちゃったんだけど。』って。

それが言えたらきっと、今の涙も素敵な思い出のひとつに変わると思うな。」

「そうかな。何だか怖い·····。」

「大丈夫。絶対に大丈夫。」

彼女ははっきりと、まっすぐ目を見て言った。