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第9話

受け入れ難い事実
「·····え、」

「あなたはどうしても忘れたいことがあった。

だからこの店にもたどり着けたし、記憶だってあなたの意思を確認してから慎重に消しました。

それ以上、何を望んでいるんですか?」

「彼女が·····、同棲している彼女が行方不明になりました。」

普通なら警察に届け出るはず。

「周りの人間に彼女について尋ねても、当たり前だろと言われてすぐに話をそらされてしまいます。

僕が探そうとすると、みんな揃いも揃って止めるのです。

『落ち着け。悲しいのは分かるが、もうここにはいない。』と。

これはどういうことなんですか?

それで何となく、ここのお店と関係している気がしたんです。これは·····あくまで感でしかないのですが。」

店主は大きく息を吐き出す。いらだちが半分、憐れみが半分といった曖昧な表情をしていた。

「·····そうですよ。私が消した記憶と大きく関係しています。」

「じゃあそれを·····」

「今更知って、どうするんですか?私が消したことも無駄に終わるし、何よりあなたが切に消したいと願った出来事なんです。それを再び手にするメリットが感じられません。」

「仮に、それを私の口から話したとしてもあなたの記憶は取り戻せませんよ。いちど捨てたらそれきりだとはじめにも言いました。」

消したいとさえ願った記憶。

でも、


_______________でも。



知りたい。知らなきゃいけない。

「·····お願いですっ。ひとつだけ教えてください。彼女は今、どこにいますか?」

震える声で聞くと、うんざりするように小さく呟く。

「·····この世には、いません。」


ひゅうっと喉の奥が鳴った。

目の前がチカチカとスパークした。

膝がガクガクと震えた。

それでも、上手く理解できない。

「えっ·····、な、んでっ?」

「それ以上は言えません。これは、あなたが願ったこと。私はそれを実行したまでです。」

無機質な声はとても冷淡だった。まるであらかじめ台本でも用意されているかのようだ。もしかしたら、彼女の中でこんな結末が予想されていたのかもしれない。

「どうしてっ、止めてくれなかったんだ·····!」

「だってあなたの人生でしょう!?私が口を出すことじゃありませんよね?」

ああ、そうか。この人は傍観者なんだ。だからこんなにも、他人事な口ぶりなんだ。

「もういいですか?用がないなら出て行ってくださいっ。」

そう言うが早いかどんっと押されて、店の外に出される。おまけにがちゃんと鍵を閉められた。

怒りたいのは僕の方だ。

「·····いないってどういうことだよぉ。」

膝から崩れ落ち、泣き叫ぶ気力はなかった。もちろんドアを叩くことすら億劫だった。

泣きたいのに、泣けない。

それは実感がないから。彼女がいないという事実を聞かされるだけじゃ、受け入れることなんて出来ない。受け入れてたまるものか。